OBT 人財マガジン
2011.12.07 : VOL129 UPDATED
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街角に見るソーシャル・イノベーション
現在、厚生省のまとめによると2011年3月時点で、10,890人(ネットカフェ難民や車上生活者は除く)ものホームレスの方々がいらっしゃるそうです。ただでさえ就労するのが大変な状況な中、一旦、家を失うと、職を見つけることが更に厳しくなり、その後、社会へ復帰する道を絶たれてしまうのが今の日本の現状です。しかし、そうした方々に手を差し伸べている企業があります。ホームレスの救済ではなく、仕事を提供し自立を応援しているのが有限会社ビッグイシュー日本さんです。始まりは1991年のロンドンで、日本では2003年9月に大阪からスタートしました。事業の内容は、街中で販売者さん(ホームレス)の方が、300円の雑誌を売り、その中の160円が販売者さんの収入となります。そのため、頑張れば、頑張った分だけ、自らの売上となり、そのお金が貯まれば、路上ではなく、宿に泊まることができます。そして、収入が増えれば、家を借り、職につける可能性も出てくるといいます。しかし、実際に販売者さんにお話を聞くと、ただひたすら買ってくれるお客様を待つと言うのは、非常に大変なことで、時には心が折れそうになるそうです。ホームレスであるということをカミングアウトしなくてはいけない、中には心無い言葉をかけて行く方がいたり、また、日常的にタバコの火を投げられる、つばをかけられるなどの行為もあるそうです。しかし、一方で、応援してくださる方も多くいると言います。暑い日も寒い日も、決められた場所に立ち続ける姿に、"販売者さんの姿勢をみて、一生懸命さに勇気をもらった"、"逆に自分が励まされた"等の投書がビッグイシュー日本さんには多く寄せられます。最近は、ホームレスが若年齢化になっており、販売者の平均年齢がリーマン・ショックを挟む2年間で56歳から45歳へと11歳も若くなりました。しかし、多くの人はまだ、希望を捨てず、ビッグイシューにやってくると言います。現在は、他のNPO団体や行政、応援したいという企業も増えてきています。然しながら、市民一人ひとりが自分がいつそうなってもおかしくないという意識を持って、こういった人達の社会復帰を手助けするような仕組みを作っていかなくてはいけないとビッグイシューの方は語ってくださいました。被害を受けるのはいつも弱者です。しかし、それらを何らかの形で解決していかなければ、国は益々住みにくくそして、不安と孤独を抱えた人が増えてきます。今まで、私たちは国がなんとかしてくれると思ってきました。しかし、現在日本は、多くの問題を抱え、国や行政だけでは解決できない、手が回らない問題が山積しています。今後は、私たち一人ひとりがこういった現実に目を向け、もっと、積極的に解決策を考えることが重要になると考えます。次回現場ドキュメントでは、ビッグイシューの活動について詳しくご紹介します。