OBT 人財マガジン
2011.09.14 : VOL123 UPDATED
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裸で生きる
先日、目的もなく本屋に立ち寄った際、「裸でも生きる」という書籍が目に留まりました。以前なら、気付かなかったかも知れませんが、震災以降、大事なものの優先順位や価値観に変化が起きているからなのか...手に取り、購入。著者は、バングラデシュで製造したファッション・バッグを日本で販売している株式会社マザーハウス代表取締役の山口絵理子さん。国際機関で開発援助に携わる仕事をしたい。山口さんは、22歳で初めてバングラデシュを訪れ、そして現地で暮し、経済格差の激しいと言われる途上国の現状を目の当たりにしたそうです。最初は、学校を作ろうと考えたそうですが、それよりも「現地の素材を活かせる事業が必要である」と考えメイド・イン・バングラデシュのファッション・バッグの工場を作ることを決心。-- 何故、バッグなのか?現地で、コーヒー豆を入れるための麻袋に使われているジュートという植物に出会い、調べていくうちにジュートの生産はインド・バングラデシュが全世界の90%を締めていることに気が付きます。さらにジュートという植物はとても環境に良い繊維素材。この国の世界に誇れる素晴らしいジュートを使い、現地で製造し、最終商品として輸出することができれば・・・。日本人が驚くようなかわいいバッグが作れたら・・。「そうすれば、経済の基盤をしっかりと持った持続的な協力ができる。」そう思い、なんとかしてそれを実現したい!やってみて、それがたとえダメだったとしてもいいじゃない。途上国の制度や政治的な問題はなかなか変わらいけど、現地の人達が「自分たちは世界に誇れるものを作ることが出来ている」という気持ちを蓄積していってくれれば、きっといつか変わるはずだと...。しかし、ジュートという繊維も初めて、バッグの製造、販売も始めて。そんな山口さんが、ジュートの生産者探し、日本で通用する品質のバッグをつくる。実際、動き出してみると、本当に多くの難しい問題にぶち当たったそうです。政情不安の中、デモやストライキなどが起きます。デモが収まり、やっと道路封鎖が解け、急いで工場に向かうと、山口さんが買った素材も、デザイン画も、工場のみんなが誰一人としていなくなっていた。そして、工場のパートナーにも電話をかけても、いつまでたってもつながらない。「裏切られたんだ・・・」そして、その経験から自らの手でコントロールできるよう自社工場を作り、朝一番で工場に行き、一番遅く工場を出る。このことを山口さんは黙々と続けたそうです。現地の社員の方々と一緒に働き、当たり前のことをやり続ける山口さん。みんながそんな山口さんの姿を見て、まねし始める。こうして、言葉だけでは伝わらない"途上国発が世界に誇るブランドを作りたい"という思いを、今も全身で伝え続けているそうです。「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という理念を抱き、24歳で起業して6年。バングラデシュの自社バッグ工場を運営し、直営店は8店舗に。また百貨店でも販売されるまでになっています。経済の基盤をしっかりと持った持続的な協力をしたい途上国発が世界に誇るブランドを作りたいこの強い思いを実現するために、問題や壁にぶち当たっても、その度に、「解決できないことはない、きっと手段はあるはず」と考えて、行動し、また考え、そして行動することを繰り返している山口さん。強い思いがあるから、考え抜き、事を積み重ねていく。「裸で生きる」とは、自分が何をしたいのか、自分はどう生きたいのかに自分の明確な意志を持って生きるということなのだと思います。