OBT 人財マガジン
2011.05.25 : VOL116 UPDATED
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"独自性"に見る企業の競争優位性
最近のTV番組には飽き飽きしていて、華やかな商業施設やマニュアル通りのサービスにも実は疲れきっていて、皆何かするよりも、何もしない時間を欲している。「星のや 軽井沢(以下、星のや)」※株式会社星野リゾートの運営施設に先日宿泊して、そんな自分に初めて気づいた。この場をかりて宣伝したい訳では無いが、三日間の滞在を経て、非日常的な空間を創り上げ、満足度の高いサービスを提供している同施設(同社)の"徹底ぶり"(と、その満足度)に感嘆している。星のやは豪華で、デジタルで、(売り手の生産性が計算された)近代的な「宿泊施設」ではない。独自の思想を持って創り上げた"集落"での暮らし、「非日常の経験」である。自然を体感しているが、全てが計画的。効率だけど合理的な環境を創り上げ、売り手の「これでもか」という過剰なサービスに辟易する事も無い。ユーザーは非日常的な経験を、自分のペースやスタイルで楽しむことができるのである。東京に戻って思う。 ― 今の多くの企業の在り方はどうだろうか。生産性を追求し、画一性を高めた売り手側のサービスは、個々のユーザーの満足度を高めているだろうか。ハイスペック、ハイエンドを目指した過剰な仕様は、本当にユーザーの潜在的なニーズを満たしているのだろうか。『もっと日本らしさを大切にしていたならば、今とは違う風景が広がっていたはず。』「星のや」のコンセプトはいみじくも、今の多くの企業の在り方を問うているように感じる。前回からご紹介している「サイボウズ」のインタビュー記事とも重ねあわせてみる。同社の人事の考え方は「逆転の発想」「既成概念を疑ってかかる」こと。一見極めて非効率な「100人・100通り」の人事制度を目指すことが、結果的には定着率の向上、社員のモチベーションの向上につながっている。先行きの見えない日本経済――この言葉はリーマンリョック以降、そして、今回の震災を受けて、聞き飽きるくらい耳にするが、この様な状況下でも成功している企業は存在する。共通点は今までの常識とは全く違うやり方をする「独自性」。今の様な時代だからこそ、従来型のパラダイムを脱し、独自性を起点に、新たな競争優位性を築く事が、多くの企業、人(ビジネスパーソン)に求められるのではないだろうか。