OBT 人財マガジン

2010.12.22 : VOL106 UPDATED

OBTカフェ

  • 新たな発想が新たなニーズを生む

    早いもので2010年も残すところわずかとなった。今年も『流行語大賞』なるものが発表
    されたが、『ヒット商品』で一年を振り返るのもおもしろい。生活に密着しているモノが
    多いので個人的にももちろん楽しめるのだが、なにより、市場の傾向や世相の動向が
    ダイレクトに伝わってくるところがいい。

    雑誌『日経トレンディ』の「2010ヒット商品ベスト30」によると、今年の1位は"食べるラー油"。
    桃屋の『辛そうで辛くない少し辛いラー油』のヒットを受け、各メーカーがこぞって類似商
    品を発売、飲食店でも"食べるラー油"メニューが多数登場した。私も某有名中国料理店
    のものを手土産でいただいたが、かつて食べたことのない独特のザクザクとした食感と、
    ラー油の概念を打ち崩す適度な辛さにすっかりハマッてしまった。

    ちなみに「食べるラー油」は『流行語大賞』でもトップテン入りしており、その反響ぶりが
    伺える。元々、"食べるラー油"の発祥は石垣島や久米島といった沖縄とも言われてい
    る。ネット通販で評判を呼び、特に2004年頃からは、密かに人気が過熱していたようだ。
    桃屋がこれをヒントに商品開発をしたのかは定かではないが、いずれにしろ、先見の明
    があったということには変わりない。長引く不況による"内食"傾向も手伝って、ラー油の
    市場規模は7倍以上にも広がったと言われている。これも計算のうちだとすれば、おそる
    べし。

    個人的な印象として勢いを感じたのは、朝食マーケットの拡大だ。昨年は"朝カレー"が
    話題になったが、今年のヒットは"朝ラーメン"。こちらも元々、福島や静岡の一部の地域
    に根ざしていた文化だというが、今年に入り、東京の人気店が次々に市場に参入し、業
    界にブームを巻き起こした。傾向としては、通常よりも安価な価格&魚介を効かせたあっ
    さり味に設定している店が多数。当初は「朝からラーメン?」とも思ったが、実際に足を運
    んでみると、どこも驚くほどの盛況ぶりであった。事実、朝食マーケットの参入により、店
    舗の売り上げは確実に伸びているという。

    ラー油を"おかず"にごはんを食べ、"朝食"にラーメンを食べる時代が来ようとは、数年
    前にどれだけの人が想像したことだろうか。モノが売れない時代でも、ヒット商品は必ず
    存在する。消費者の購買欲を生み出すためには、まずは凝り固まった既成概念を打ち
    破ることが必要なのかもしれない。