OBT 人財マガジン
2010.08.25 : VOL98 UPDATED
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"心"を育てる
企業を訪問する度に、"社風"というものをつくづく感じる。同じ会社であっても部署が異なるだけでまったく雰囲気が違う、なんてこともあるので、正確に言うと私が感じているのはもっと小さなコミュニティの"空気感"なのかもしれない。同じような業種、部署であっても、「真面目」「丁寧」「好奇心旺盛」「ユーモラス」など、職場によってカラーは様々だ。思うに、"空気感"というものは、そこにいる人によって作り出され、人を介して伝播するものではなかろうか。上司や先輩の背中を見て、人は育つからだ。よい環境にあれば、よい人財も育ちやすいというもの。よい面ばかりではなく、悪い面でもまた同じことだ。すなわち、『人を磨く』ということは、組織を育てるということに直結する。東京・中央区には老舗企業が密集しているという話を以前もしたが、ここの経営者たちには皆『人材は大切な財産』という共通の理念がある。物を買うのは人、物を売るのも人。顧客との長い付き合いとは、従業員と客との間に結ばれた強い信頼関係があってこその賜物だ。客から信頼される人財こそが、老舗の暖簾をこれまで支え続けてきたのだろう。それを感じているからこそ、これらの老舗企業では従業員を"宝"として大切に育てている。では、従業員に求めるものとは何か。それは、完成された知識ではなく、感覚であり、感性であり、相手の気持ちを汲み取る"心"なのだそうだ。確かに、老舗の商品には職人の心が伝わってくるし、サービスにも心からのもてなしを感じる。現代社会に蔓延する「効率化」だけでは片付けられない強い信念が、今なおそこには息づいている。人を大切にする"心"こそが、長寿の秘訣。こう感じてしまうのは、果たして私だけなのであろうか。