OBT 人財マガジン
2010.05.12 : VOL91 UPDATED
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"プロ"の仕事が客を呼ぶ
今回の「この人に聞く」の中で、3000名の客の名前を覚えているという、ベルマンの
方の話があったが、私は、日ごろ飲食店関係の方に"プロ"を感じることが多い。
先日、中国料理店で店主の方に「この間、あちらの席で、あの料理を食べて
いらっしゃいましたよね」と声をかけられ、びっくりした。
店に訪れたのはそれが2度目で、常連というわけではない。
しかも、この方はホールにいたのではなく、奥の厨房で鍋を振っていたのだから、尚のこと驚いた。小窓からテーブル席を覗いた際、私と一瞬目が合ったのを
覚えていたのだそうだ。
自分のことを覚えてくれている、というのはやはり嬉しいもので、「少々遠くてもまた食べに来ようか」、などと単純にも思ってしまう。
夜は日替わりのコースのみで展開しているが、どの客にどのメニューを出したかも
覚えているとのこと。
次の来店の際は、前回と同じような料理内容にならないよう、気を配っているという。
聞けばこの店主、とある有名店で総料理長をも務めた方。
どおりで、味も抜群に旨い。都心から随分と離れた郊外という立地にも関わらず、連日客であふれる盛況ぶりだ。
料理の味がいいのはもちろんこと、店主の細やかな心配りもまた、店の人気にひと役買っているのだろう。
「人気店」と呼ばれる店ほど、こういった経験は心なしか多いような気がする。
皆驚くほど客の顔を覚えていて、その度に感心させられるばかりだ。数あるお店の中から消費者がその店を選択するには、それ相応の理由がある。
例えば飲食店なら、味プラス価格、立地、雰囲気、接客。
他店にはない「付加価値」をどれだけ多く加えられるかが、重要だろう。
ベルマンやフロントクラーク、シェフやウェイターといった異なるジャンルのスタッフで業務を分担しているホテルにおいては、それぞれが"プロ"である必要がある。
一人一人の役割が、再訪のきっかけに大きく起因する分、個々に課せられる責任も重いというものだ。
富士屋ホテルの安藤総支配人は、「プロが集まる組織になれば、ホテルは強くなる」
とおっしゃったが、これは、企業という組織においてもやはり同じであろう。
その他大勢に埋もれず、一人一人がその業務のプロであれ。
スペシャリストの集団であれば、企業はもっと強い組織になる。