OBT 人財マガジン
2010.03.24 : VOL88 UPDATED
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料理の味を決めるもの
「高い食材を使えば、旨い料理ができるのは当たり前。
手間をかければ、安い食材だって旨くなる」
ある料理人の方がそんなことをおっしゃっていたが、人財教育と料理は似ている。
優秀な人財をたくさん雇いたい、というのが企業の本音なのだろうが、人財の獲得は他企業との競争になってきている。
思うような人が集まらない、と頭を悩ませているところもあるかもしれないが、
"ない"のであれば、"育て"ればいい。前述の料理人の方は、「フカヒレ」を自分で作る、と意気込んでいた。
「漁師さんからフカヒレがたくさん余っている、という話を聞いたんですよ。
生の状態で仕入れるので安く手に入るのですが、『下処理が面倒』と、誰も買おうとしないみたいで」手間をかけるのはタダ、と一から手作りに挑戦し始めた。
生のフカヒレをボイルし、歯ブラシで丁寧に洗い、天日干し。
決して楽な作業ではない。
「フカヒレを使った料理が手ごろな価格で食べられたら、お客様は嬉しいですよね。
たとえ1日5食しか提供できないメニューであったとしても、この作業を面倒だとはまったく思いません」
そういえば、別のシェフも以前こんなことをおっしゃっていた。
「手間や時間が作り出す味っていうのがあるんですよ。右から左で、サッとは作り出せない味というのが」
お店の名物はタンシチュー。
塊のままじっくり煮込んだタンは、まさにとろけるような食感だ。
「小さく切れば煮込む時間は短く澄む。
でも、それだと角がピンと立った美しい切り口や、なめらかな食感は失われてしまうんです」
たとえ最高級の食材使ったとしても、手間を省いてしまっては、
きっとこの店の味や食感にはならないのだろうと思う。食材はもちろん、いいに越したことはないが、
いい素材を使っても、調理法や味付けを間違えれば、旨い料理は完成しない。
人もきっと同じこと。
――手間を惜しんでいては、人は育たない
どれだけ丁寧に仕込み、素材の味を生かした調味を施すことによって、
完成する料理の味も変わってくる、というものだ。