OBT 人財マガジン
2009.12.09 : VOL81 UPDATED
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時代の潮流を見極める
あるお仕事で関わりのあった日本料理店が、経営不振を理由に突然閉店しました。
本店は、ミシュランガイドで3年連続星を獲得している名店。
その味を継承させた系列店が、オープンからわずか1ヵ月で閉店に追い込まれるとは、
まさに寝耳に水の出来事でした。ミシュランガイドといえば、東京版が発売されて今年で3年目。
その影響力は強く、星を獲得したお店は予約でいっぱいになるともいわれています。その一方で「名誉ある星を獲得したにも関わらず残念ながら閉店したお店もある」
ということを知りました。
今回のような件は例外ではなく、08年版で星を獲得したにも関わらず翌年閉店したお店は4店、
09年版で星を獲得したにも関わらず翌年閉店したお店は2店あるそうです。米国の金融危機による不動産連鎖倒産のあおりを受けた店、食材の産地偽装が発覚した店、
話題性に飛びついて訪れた新規客がリピーターとして定着せず、従来の常連客が著しく減少した店などなど。
理由は様々ですが、ひとつ言えることは、説明責任や危機管理能力の欠如は、
たとえ星付きの飲食店であっても例外なく経営に影響を及ぼすということです。今回、お話を伺ったワタミ株式会社桑原社長は、常に「危機」を意識し、
「計画」、「実行」へと移している印象を受けました。従来のやり方や概念にとらわれず、他業種であっても使える理念や
システムを取り入れる柔軟な姿勢や、業績が好調であっても今後起こり得る「危機」を
的確に予測し、先手を打つ管理能力には目を見張るものがあります。
老舗料亭と現代風居酒屋。
グラウンドは違えど、「お客様においしい料理や楽しい空間を提供したい」
という思いは同じはず。
伝統的な味や技法、もてなしを守るためにも、老舗にも――いや老舗にこそ、
マネジメントシステムの構築は必要なのでは、と思いました。長きにわたって培ってきた自信と自負を持つ職人の思いとは
相反するところにあるものかもしれませんが、
時代の潮流を見極める目を持つことは大切です。
だって、どんなにおいしい料理を出しても、
お店がなくなってしまっては元も子もないのですから......。