OBT 人財マガジン
2008.10.15 : VOL54 UPDATED
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人事プロフェッショナルへの提言- 第6回 企業と人との関係
(3)被雇用能力と雇用能力
雇用に関するキーワードとして、「雇用能力」と「被雇用能力」という概念がある。
雇用能力(エンプロイメンタビリティ: employment-ability)とは、企業が優秀な人材を雇用でき
る能力をいい、被雇用能力(エンプロイアビリティ:employability)とは、社員が既存企業または他の企業に雇用されうる能力をいう。
端的に言うと、企業が「優秀な人材を雇う価値」を持っているか?
従業員は「自分が雇われる価値」を持っているか?が問われ時代になったのである。
終身雇用、年功序列から、実力主義の世の中に変わり、会社と社員の関係が大きく変わった。これからは、ひとつの会社の中で雇用を保障するのではなくて、1人ひとりの社員が、他の会
社に行っても、雇用される力があるという状態を社会全体としてつくり、雇用の場が社会全体として確保されていくようにすることにより、一人一人の雇用の安定化を図っていこうとする考え方である。
今や、1社で終身雇用を保証することはできない。
いま、勤めている会社でしか通用しないスキルしかもっていないとしたら、その会社で雇用が保障されなくなったときは、悲劇である。
それに対して、より広く雇用される能力を持っている(エンプロイアビリティが高い)状態にするために、各個人がスキルアップに励み、また、各企業もそのような人材が定着できるように、魅力ある企業にしようと努力する。
エンプロイアビリティを高めることが、ビジネスマンの幸せに繋がり、エンプロイメンタビリティを高めることが企業の成長・発展につながる。
そのような社会では、自ずと会社のマネジメントも変わっていくことになる。
すなわち、「どうしたら、優秀な人材が自分の会社で長く働いてくれるのか」が重要な経営課題となり、優秀な人材をひきつける環境、雇用主としての魅力づくりが必須になる。
企業にとって必要な人材を維持する(確保)するための施策など(リテンション)をどうするかが、人事の課題となる。
優秀な社員の定着戦略としては、経済的リテンションと心理的リテンションがある。
経済的リテンションとは相応の報酬によるモチベーションの維持であり、心理的リテンションといは、能力開発支援策の基に、キャリアアップ、仕事と生活の調和策(在宅勤務・フレックスタイム・育児休暇など)や、表彰制度など。
すなわち
① 楽しくできる仕事そのもの
② 仕事をすることによる自分の能力の向上
③ 仕事をすることによる人間としての成長
④ 仕事をすることによる同僚・上司・部下からの承認
がそれにあたる。
特に、日本においては、就業環境が習熟しているため、金銭以外の、組織風土、働きやすい環境、個人のスタイルに合致した環境の提供など、個々人のライフスタイル、キャリア形成に資する仕組みの領域が求められつつある。