OBT 人財マガジン
2008.09.24 : VOL53 UPDATED
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人事プロフェッショナルへの提言 - 第5回 企業と人との関係
(2)雇用の安定はキャリアの安定から
「何が起こっても不思議でない時代」。ある日突然働いている環境が一変する。
歴史も体力もある一流優良企業に勤めて、隆盛を謳歌していたサラリーマンが一瞬にして職場を失う。
社員も社員も一切の力が及ばない経済環境の変動や、たった一握りの人間が引き起こした不祥事、目覚めたら自分の会社が外資系になるなど。今日、決して珍しいことではない。
金融機関であろうが、情報会社であろうが、あるいはメーカーであろうが、それは、まさにいつ起きてもおかしくない事態なのである。
スタンフォード大学John D,クランボルツが提唱したプランド・ハップンスタンス・セオリー(Planned Happenstance Theory:計画された偶然理論)というものがある。
変化の激しい時代には、「キャリアは基本的に予期しない偶然の出来事によってその8割が形成される」とする理論だ。
予測のつかない環境の変化に対応するためには、キャリア開発の計画に固執しすぎず、むしろその変化に対応できる"能力"を備えるべきである。そのため、個人が自律的にキャリアを切り開いていこうと思ったら、偶然を必然化する、つまり、偶然の出来事を自ら仕掛けていくことが必要になってくる。
そのポイントは次の5つであると述べている。
① 好奇心(Curiosity):新しい学びの機会を探求せよ
② 持続性(Persistence):失敗に負けずに努力し続けよ
③ 柔軟性(Flexibility):姿勢や状況を変えよ
④楽観性(Optimism):新しい機会は必ずやって来て、それを自分のものにすることができると考えよ
⑤冒険心(Risk Talking):結果がどうなるか見えない場合でも行動を起こせ
いまや、安定した雇用先を選ぶかではなく、如何に安定したキャリア形成力を自ら築いてくかが、結果として雇用の安定につながるのである。
終身雇用が崩壊した現在、社員の雇用の安定という概念を変え、社員一人一人に自らのキャリアを切り開く、キャリア形成力の強化がこれからの企業にとっての雇用の安定を社員に保証することになるのではないだろうか。