OBT 人財マガジン

2008.06.11 : VOL47 UPDATED

OBTカフェ

  • 人事プロフェッショナルへの提言 ~人事部が遭遇している課題~

    (1)モチベーションの向上をどう図るか

     

     

    「今人事部が遭遇している課題は何か?」と問われれば、

    "社員モチベーションの向上"がまず挙げられる。                                

    最近「モチベーション・リスク」という言葉が使われるようになってきた。

     

    「モチベーション・リスク」とは、不祥事、過失、モラルダウン、

    錯覚的意思決定などの人的要素に起因する経営リスクをいう。

    確かに、モチベーションが原因と思われる事件・事故が増加している。

     

    一方、学校に行かず仕事も職業訓練もしないニート(NEET:Not in Education, Employment or Training)が18年平均で62万人(H19青少年白書)に上るといわれる。

     

    ニートは必ずしも「働く気のない若者」ではないが、野村総合研究所が2005年10月に発表した「仕事に対するモチベーションに関する調査」によると、現在の仕事に対して無気力を感じる人が75.0%にも達し、若者のモチベーション低下が顕著であるという。

     

    さらに、WHOは、先進国の地域や企業に経済的な負担をもたらす病気のトップが2015年にはうつ病になるという。

     

    心の病は個人の問題にとどまらず、組織全体の「能率低下とミスの増大」「社員の休業と欠勤の増大」「モラール低下とリスクの増大」をもたらす。

     

    このように今企業には、複合的にモチベーション・リスクが進行していると考えられる。

    第1段階 自発的な創意工夫力の減退

    第2段階 コンプライアンス軽視

    第3段階 ミスや事故の発生

    第4段階 業務遂行意欲の減退

    第5段階 自己中心的行動の多発

     

    結果として、組織として重大かつ深刻な不祥事(業務上横領、職権乱用、公私混同、故意的な事故・犯罪)の発生へと発展する。

     

    そもそも、モチベーションとは、人が一定の方向や目標に向かって行動し、それを維持する働きを意味している。

    いわゆる「動機づけ」「やる気」と呼ばれものである。

     

    モチベーションは、2つの要因から構成されているとされ、ひとつは、人の内部、心にあって行動を引き起こす「動因」(ドライブ)とよばれるものである。

     

    身近な動因としては、食欲や睡眠といった生理的欲求があり、

    これらの1次的欲求が満たされると、さらに2次的、3次的、4次的、5次的欲求が生じてくる。

    これについては、マズローの欲求階層説としてよく知られているところである。

     

    モチベーションを構成するもう一つの要因は「誘因」(インセンティブ)である。

    この要因により人の行動が誘発されるのである。

     

    企業におけるこの動因と誘因を具体的に研究し、

    「動機づけ衛生理論」として発表したのがハーズバーグである。

     

    最近では、ピーター・キャベリ(著書:雇用の未来)の「満足度とモチベーションは無関係である」とする考え方ある。

     

    しかし人は他の経営資源と異なり、その貢献度合いがモチベーションに左右される。

    そして、企業は個人のモチベーションに対して間接的に何らかの影響を与えることができるのであれば、このような状況に対して人事部が対処しなければならない最重要課題と認識する必要がある。 

     

    On The Business Training 協会 栗田 猛