OBT 人財マガジン
2008.05.28 : VOL46 UPDATED
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人を育てると言うこと ~自分を褒めてやりたい~
5年ほど前、震度6弱の大地震の真っ只中にいたことがある。
幸い亡くなった人はなかったが、多数の家屋、建築物が倒壊した。
翌日から、当時の県知事はヘルメットをかぶって復興の指揮をとる映像が報道されていたが、このとき思ったことがある。
実際に泥まみれ、汗まみれになって瓦礫を片付けているのは、自衛隊員や消防団員、一般のボランティアの人たちだ。
決してスポットライトが当たったり、褒められたりすることのない仕事だ。
この人たちは、人間として、やるべきことを黙々とやっているのだ。
ずいぶん前の話だが、当時NHKの川口幹夫氏が『主役・脇役・湧かせ役』という著書でこう書いていた。
「脇役は単に脇の役ではなく、湧かせ役でもある。主役と脇役とのカラミが功を奏するとドラマは深みを増し、思いもかけぬ成果を生む」
脇役こそ大切だという考え方は、サラリーマン社会にも通ずることだろう。
脇役的な立場にいる人たちが自分の力を信じ、生き生きと自分の力を発揮する組織と、そうでない組織との力の差は大きい。
人を動かすとき、褒めるということは必要だ。
しかし、褒めることばかりやっていると、褒められて当たり前、褒められなければ動かない人間をつくり出す。
そうすると日々の行動なり仕事なりに感動がなくなってくる。
向上心も失せてしまう危険な状態に陥る。
『やってみせ、言って聞かせてさせてみて、褒めてやらねば人は動かじ』と言ったのは山本五十六。
一方、バルセロナオリンピックの女子マラソンで銀メダルに終わった有森選手は、ゴール後のインタビューでこう語った。
「自分で自分を褒めてやりたい」
出場すれば金メダルを期待する日本国民に対して、銀メダルだったけれど自分自身のがんばりを自分で褒めてやりたいということだ。
褒めてもらいたいからするのではない、スポットの当たらない、自分で自分を褒めてやる仕事が世の中にはいっぱいあることを若い人たちに教えていくことも必要だろう。
On The BusinessTraining 協会 門田 元宏