OBT 人財マガジン
2008.04.23 : VOL44 UPDATED
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人を育てると言うこと ~万歳先生~
ある中学校に"万歳先生"というあだ名の先生がいた。
その先生がクラス担当に決まると、生徒が「万歳!」と叫ぶところからきているあだ名だったそうだ。
この万歳先生、期末試験になると生徒の家をひそかに廻って、『期末だ、ガンバレ』という手紙とキャラメル一個を小さな封筒に入れて郵便受けに入れていく。
体操の授業中、受持ちの生徒がグランドに行っている間に、教室の筆箱や教科書の間に激励の手紙を入れておく。
教室に戻った生徒がその手紙を見つけ、我も我もと探し出してみんなで読みふける。
毎年2月、高校入試が始まる。
万歳先生は、朝早く、駅に繰り出し、車の屋根に『○○中学生徒諸君、奮闘を祈る』と幟を立てて、受験生一人ひとりを激励する日が続く。
初めての受験で不安でいっぱいの生徒も、万歳先生の顔を見て、猛然と奮い立って出発する。
寒風吹きすさぶ早朝の駅頭で、ひとり立っている万歳先生を生徒が見つけると、「先生~!」と叫びながら駆け寄っていく。
万歳先生も駆け寄って「ふだんの実力を出せば大丈夫だ!」と激励する。
もちろん、日頃の授業も熱意とユーモアにあふれた教え方で、しかもプライベートな問題にも親身になって相談に乗る。
この先生は、自分の仕事に誇りを持っていて、生徒が可愛くてたまらないのだ。
生徒は、この駅頭でのシーンを生涯忘れることはないだろう。
部下の育成ということが、今日のように価値観が多様化している中で、企業としてはきわめて難しい問題になっているようだが、この話を聞くとき、自分も同じようにやってみようという思いが湧きあがってくるだろう。
感動のない仕事ぶり、感動のなかった過ぎし日々、感動を大切にする気持ちの薄れている様子に思いを致すとき、ある種の衝撃を受けないとしたら、自己の感性はかなり磨り減っていると思っていい。
感動の伴わない人生は人生とは言わない。
学校教育の現場に、企業内教育の現場に、燎原の火の如く"万歳先生"が生まれるとき、日本の若いひとたちの眼がどれほど輝きわたるか、万歳先生はそのことを黙々と行動で示していらっしゃったのだと思う。
On The BusinessTraining 協会 門田 元宏