OBT 人財マガジン
2007.12.12 : VOL36 UPDATED
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眼にはみえないもの
先日、近所の雑貨店の店長と立ち話をした際、
「最近、ある日に決まってお店の売り上げが伸びている事に気づいた」
という話を聞いた。陳列する商品やディスプレイ、内装を変えた訳でもないのだが、
一点だけ変えた事があったのだそうだ。それは店内にかけるBGMだった。
あるアーティストのアルバムを流す日は他の日に比べて、
わずかではあるが商品が良く出ていたというのだ。実際に聞いてみて頷けるものがあった。
そのお店で流れていた音楽はAORというジャンルのものだった。
定義の詳細は様々だが日本では平たく言えば"大人向けロック"と認知
されているようで、様々なジャンルの要素がおり混ざって、一曲一曲の
切り売りではなく、全体を通してストーリーを描き、アルバムとして完成度
が高い作品が多い。音楽に詳しい飲食店の友人にこの話をしたところ、
「飲食店も含めて最近多くのお店ではラテンやボサノバが増えているが、
曲そのものは良くても季節やエリア等、場合によっては東京の生活感に
あわないケースもよくある。その点AOR は(海外の)都会での生活観を
精緻に体現している作品も多いため、そのお店の商品とBGMが作り出す
"雰囲気"がマッチして、"こんな生活をしてみたい""自分の家がこういう
イメージになったら"という買い手の、一種のナルシズムをくすぐったの
ではないか」という意見を聞いた。供給過多で買い手側がモノ・情報を簡単に、素早く、豊富に手に入れる
ことができる今となっては、従来のセオリーはもはや通用しない。POSシステムによる管理強化、キャッチコピー等に見られる平面的な管理
では無く、表立ったアピールは感じ取れないものの、買い手の潜在的な
心理に、繊細に訴えかけるアイディア、仕掛けを生み出す柔軟で創造的な
能力がこれから先、ますます重視されていくのではないだろうか。