OBT 人財マガジン
2007.11.06 : VOL34 UPDATED
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変化するモノ、しないモノ
変えるべきモノ、変えてはいけないモノ仕事をする上で、様々な企業の取り組みやその企業の創業者、
世界規模での環境変化や業界における変化など外部環境について
調査することが多い。-外部環境の変化-変わるモノ
最近では、人口構造の変化によるヒトの希少価値化や次世代法による
女性の活用、あるいは、会社法の改正など企業は外部環境の変化に
よって大きな転換を迫られている。人財の育成・活用という点で、主要企業が共通のテーマとして挙げているのが
・ダイバーシティマネジメント (特に女性活用や再雇用など)
・グローバル化への対応 (グローバル人材の育成など)
・企業風土の改革や浸透
などである。そして、そのために大規模な研修施設の建設や
多様性を活かすための風土改革に積極的に乗り出している。一方、このような急激に変化する時代の潮流の中で、その変化に気付かない、
もしくは気づいても対応が遅いなど、変化に取り残され、衰退する企業も
後を絶たない。これらは、変化するモノと変えるべきモノの一例であるといえる。
-人間の性- 変わらないモノ
また、変化しないモノの例としては、「人間の習性」があげられる。
「変化を好まない習性」「地道な努力をせずに近道をしようという認知的節約」
など、意識して自分を律していないと「今がよければいい」「楽をして成功したい」
という気持ちから安易な方向へと流されていってしまう。企業が成長し安定期に入ると、過去の成功体験に捉われ、無駄がはびこり、
新たなことに挑戦しようという気概が失われていく、大企業病という
病気にかかりやすくなる。
居心地の良いぬるま湯につかっているうちに、創業メンバーが苦労して
創り上げてきたものまでがこの病気に侵されてしまうのである。-強い企業-
強い企業として、私が思い浮かべる企業の一つにセコム株式会社がある。
警備業というそれまで日本にはなかった分野で新たな道を切り拓き、成功を
収め、その後も「安心・安全」を実現するために、常に新たな事業を展開しながら成長を続けてきた。常に変化しているように見えるこの企業だが、そこに根付いた起業家精神、
そして安心・安全のためという目的を見失わない本質を見極める力など、
その企業風土、創業当時から受け継がれるDNAは変わらず、そこにある。時代の流れの中で表現する言葉や商品は変われども、その経営哲学や
目的の根底には決して変わらない精神が存在している。-本質を見失わないこと-
変化への対応はもちろん必要で、そのために抜本的な改革をすることも
大企業病というぬるま湯体質を脱するためには必要である。しかし、その一方で、自分たちが目的としているのは何なのか、
自分たちの強みは何なのか。なぜ顧客に受け入れられ、成長できたのか。
外部環境の劇的変化という流れの中で、なんとかしようと焦り、対症療法を
繰り返すうちに、自社の経営の本質や哲学を見失ってはいけない。多くの情報に踊らされ、自分たちの目指すもの、変えるべきでないモノを
見失えば、どんなに時代に合った施策を取り入れようと、どんなに最新の
設備を導入しようと、それは単なる張りぼてのようなものである。
ただただ時代の流れに翻弄され、流されているだけである。だからこそ、時にはその信念に基づいて、リスクを抱えても「変えない」という
選択が必要になることもあると思う。しかし、「変えない」という選択はぬるま湯に浸かって「甘える」というのとは
全く別モノだということを肝に銘じておかなくてはいけない。今回の『この人に聞く』も前回に引き続き、黒川温泉の後藤さんのお話を
掲載させていただいているが、そのお話の中にも
「やるよりもやらない方がいいこともいっぱいある」というくだりがある。変化するモノ、しないモノ。そして、変えるべきモノ、変えてはいけないモノを
見極め、全社で共有し、その上での決断力と行動力がある企業が強い企業といえると思う。
On The Business Training 協会 四辻香織