OBT 人財マガジン
2007.03.28 : VOL19 UPDATED
-
新卒採用の高まるニーズと早まる採用時期
3月20日の日経新聞に2008年度採用計画調査で幅広い業種で採用を増やす動きが明らかになったという記事が掲載されていました。企業の新卒採用のすそ野が広がっているそうです。
自動車や電機など製造業が高い伸びを保つだけでなく、非製造業(運輸・通信・電力など)も大幅な採用増を見込んでおり、内需回復を反映し人手不足感が経済全体に浸透しつつあるとのことでした。また企業側の採用時期も年々早まっており、東京商工会議所実施の「新卒者等採用動向調査」によると、採用活動の開始時期については、
「2006年12月以前」が18.9%と前年比7.5ポイント増加、「2007年1月~3月」が39.5%と、前年比4.8ポイント減少、3月以前合計が58.4%と前年の55.7%に比べ2.7ポイント増加しており、 採用活動時期を早める傾向がいちだんと進んでいることがうかがわれるという結果がでています。
ちなみに、2年前(平成17年度実施)の調査では、「12月以前」という回答が15.2%、「1月~3月」は38.0%で3月以前合計は53.2%だったそうです。前回・前々回と『人財の定着化』に関してお話をさせていただきましたが、今回のこの2つの記事の関連性もまた人財の定着化に多大な影響を与えると考えました。
"企業側の採用への高まるニーズとよりよい人財確保への動きとして生じる早期採用活動"は、一見両者にとって有効なものに見えます。
しかしその反面では、学生は高まるニーズと早まる採用時期のなか、じっくり将来のことを考える前に決断を迫られる状況になり、企業と学生との間で起こったミスマッチの影響が早期離職を招いてしまうこともあります。それにより人財不足による採用活動が長期化してしまう恐れがあることも把握しておかなければなりません。
また、大量採用する一方で入社して数年でそのほとんどが退職してしまう企業ケースも少なくなく、人財育成への熱心さの欠如やリテンション活動の不十分さなどもその悪循環の要因に挙げられるでしょう。すなわちそれらがもたらすものが定着率の悪化につながり、両者にとってよくない結果にもなりかねることを、企業も学生も十分認識したうえで活動していかなければならないと思いました。
OBT協会 島田 圭子