OBT 人財マガジン
2006.08.08 : VOL5 UPDATED
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見える変化・見えにくい変化
つい先日、小生が20年以上にわたって通いつづけていた理容店が閉店してしまった。
自分の髪質やどのようなヘアースタイルにといった説明の必要も全くなく、順番がきて椅子に座れば、終了まで世の中のもろもろに対するお互いの持論をたわいもなく語り合うという月一回の慣わしが20年以上も続いてきた間柄であったために、その後どこに散髪に行けばいいのか迷うばかりである。
お店をいくつか変えてはみたもののどうも今ひとつしっくりこない。
閉店したお店は、店主であった人間が長野県から東京に出てきていろいろなお店での修行を経て小生の住む品川の商店街にたまたま独立してお店を開業したのである。
散髪中は、政治や時事ニュースを毒舌を持って風刺的に語りまた、カットのスキルの高さ等から、土日は予約しないと相当な時間待たされてしまうような盛況ぶりであった。◆「低料金、短時間カットの理容店の新しいビジネスモデルがこの商店街にも進出し、ゆるやかに顧客の減少が始まりついに閉店せざるを得ない状況となった」という店主の話はまさに時代の流れを感じさせるものである。
然しながら、新しいビジネスモデルの台頭だけにとどまらず、かつての固定客の高齢化と本来であればその代替顧客となるはずであった若い人達の価値観の変化であろう。
今の若い人たちの買い物というのは、コンビニエンスストアでも何十秒単位でまた短くなってきているという。コンビニエンスストアで週刊誌や漫画などを一時間も二時間も立ち読みしている、ああいう人たちの時間を入れても二分とか三分とかいうことで、まだこれが短くなっている。
目的を達したらすぐ帰る。
店主のかなり一方的な話を聞かされながら時間をかけて散髪するということに対する価値観はゆらいでしまっているに違いない。◆このように、顧客の価値観の変化というのは、はっきり見えるものと見えにくい変化がある。
ハードのもの、機能のあるものは、はっきり見えるのできちんと対応すればいいわけであるが、しかし見えにくい変化をどう捉えるかということは極めて難しい。
何時変わったかと言うと1年毎の変化では見えにくいけれど、それは10年、20年という歳月の中で徐々に変わっているのであり、長い時間の間で変わってきている。
しかし10年、20年経ってみると完全に変わってしまっているということである◆顧客の嗜好の変化、価値観の変化というのは時系列的に、うまく拡大鏡を当てて見ないといけないということである。
そうでないと、現状が永遠に続くが如き思考にとらわれてしまい大きな判断ミスを起こしてしまう。◆シャッター通り商店街が話題となって久しいが小生が居住している品川の商店街に限っていえば、そんな気配はさほど感じられない。
然しながら、衰退はしていないものの、商店街そのものの在りよう、店舗構成、雰囲気等は10年、20年前とは大きく異なってしまっている。
日々はさほど感じないが、今往事を振り返ってみるとその変化が大きくわかる。変化とはこのようなものであろう。