OBT 人財マガジン
2006.04.10 : VOL UPDATED
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雛鳥の“刷り込み”と組織の“刷り込み”
満開の桜が散り始めた4月初め、真新しいスーツに身を包んだ新入社員達をよく見かけます。まだ着慣れないスーツに、少し緊張した笑顔の新入社員を見ながら、いつになってもついこの前だったような気がする自分の新入社員の頃を思い出し、「よーし、私も今日からスタートだ!」と理由もなく元気になります。
新入社員導入研修のこの時期、新入社員の多くは会社理解や商品知識、その他もろもろのビジネスの基本を頭に詰め込み、一定の研修期間を経て最初の配属先に初出社。導入研修でロールプレイングを繰り返した元気のいい「おはようございます!」は、職場内の空気を活気あるものにし、先輩社員はつい忘れていた“元気な挨拶”の効能を改めて思い出します。
また、「失礼いたします!」や廊下ですれ違う際の「こんにちは!」や「お疲れ様でした!」など、元気のある声が会社のあちらこちらから聞こえてきます。挨拶だけでなく、新入社員の存在は、職場や会社に活気をもたらしてくれます。
しかし、入社後、着慣れなかったスーツが馴染むように新入社員が職場に馴染む頃、その活気は少しずつ薄れていき、数ヶ月後には以前と同じ職場の姿がそこにあります。先日お会いした某社の経営企画室の方が、「うちの社員は、挨拶ができない。廊下ですれ違っても、知らん顔で通り過ぎる・・・。」と嘆いておられました。その企業では、「まずは基本から・・・」ということで、管理職全員にマナー研修を実施されたそうです。
マナーや挨拶の重要性の再確認や挨拶の仕方など、基本を押え直すことは大切だと思います。しかし、それと同じ、いえそれ以上に、重要なことがあるのではないでしょうか?数年前に、新宿のある企業を訪問した際、廊下ですれ違う社員の方全員から「いらっしゃいませ」と挨拶をされました。受付がない会社なのですが、「部署の方はおわかりになりますでしょうか?」と声をかけてくれた社員の方も数名いらっしゃいました。
その後、その会社の経営者とお会いした時、そのことを伝え、どういう教育をされているのかを尋ねたところ、「うちでは教育は一切やっておりません。これが風土なのです」。そして、「新しく入社してくる人たちも次第にこの風土に馴染んでいくのです。」という返事が返ってきました。鳥の雛が、卵からかえって、最初に餌をくれた人を自分の親と思う“刷り込み”という現象がありますが、組織にもそのような“刷り込み”があります。企業で働く人は、多くの場合、最初に出会った上司、配属された部門の風土や行動パターンに染まってしまい、その企業にいる間は変えることが難しいものです。
新入社員を染めていく我が社の風土や社員の行動パターンがどういうものなのだろうか?来年の春も同じでいいのだろうか?我が社の風土や社員の行動パターンなどの現状を把握するいい季節かも知れません。