「当店では品質強化月間に取り組んでいます。
お預かりした衣類の仕上がり、スタッフの対応等、
当店のサービスでお気づきの点がございましたら仰ってください」
いつも利用する近所のクリーニング店。
のんびりとした以前の雰囲気は一変、
スタッフの対応も素早く、丁寧なものに切り替わりました。
理由は競合店の出店ラッシュ。
徒歩10分圏内だけでも5店は見かけますが、
中でも、繁盛しているお店があります。
人気の秘密は衣料品等の「保管サービス」。
「ワンルームマンションなどではクローゼットが狭い」
という単身世帯の声をくみ上げ、専用倉庫で保管する同サービスは
4月開始以来、3カ月間で7万2千の注文が集まったそうです。
運営するのは創業55年、東京23区を中心に140店舗展開する「喜久屋」。
先日同社を取り上げた記事を見かけたのですが、
その中で「クリーニング市場が縮む中、社会の変化に合わせて変わらないと
生き残れない」と社長は語っています。
成熟市場で新たな顧客を獲得している例は他の業界でも見受けられます。
生命業界 ―
「自分のペースで保険を選びたい」という需要が急増。
伝統的な訪問営業が縮小する大手をしり目に、
複数の会社の商品を取り扱う小売型の店舗販売が急拡大。
様々な商品を比較しながら自分の生活設計にあった保険を選べる点が
支持され、「保険の窓口」(運営会社:ライフプラザホールディングス)
の10年度の新契約高は9450億円と三井生命、朝日生命を上回るほどに
成長しています。
二つの事例に共通しているのは「顧客が望んでいること」を掴み取る力。
前回から「この人に聞く」にご登場頂いているカクヤスも同様、
「真に顧客にとって価値あるもの」を見出そうとする
佐藤社長の信念と挑戦があったからこそ、今の成功があります。
成熟市場で新たな活路を切り開くために ―
「いかに売るか」という成長期の考え方を転換し、
「顧客は本当に何を望んでいるか」という発想から事業の在り方を
再構築することが多くの企業にとって急務なのではないでしょうか。