2011年12月アーカイブ

今回、"現場ドキュメント"にご登場いただいたビッグイシュー様が
発行している雑誌「BIG ISSUE」の表紙には、大きく300円と
書かれた価格の横に「300円のうち、160円が販売者の収入になります。」
という記載があります。

「BIG ISSUE」を初めて購入した時、販売者の方の収入の方が多いという
この仕組みにとても共感しました。

元々、内容が面白く読みたい記事が多いので、品川駅をよく使う私は、
高輪Wingの販売者の方からいつも購入しています。

先日、発売日だったので立ち寄ろうとしたところ、
ちょうど、別のお客さんが購入していました。
販売者の方はその後、そのお客さんが見えなくなるまで、
おじぎをして、見送っていました。

この方の体全体からは「いつも、ありがとうございます」
という気持ちがひしひしと伝わってきます。

また、有楽町の販売者の方は、
いつ見ても「BIG ISSUE」を持った手を真っ直ぐ上にあげ、
ピンっと背筋を伸ばし姿勢を崩すこと無く、立っています。

こういった一生懸命な姿を見るたびに、
私は、こういう気持ちを忘れてはいないだろうか、
私の背中は、気持ちは下を向いていないか・・・など、
気づかされることや元気をもらうことが多くあります。

ビッグイシューの佐野さんにお話を伺うと、
販売者さんの中には伝説の販売さんもいらっしゃるといいます。
目立つ・目立たない、人通りが多い・少ない等、
場所に限らず、どこで販売しても売上を上げるそうです。

過去にいた伝説の販売者さんは、10万部売ったら辞めるとの言葉の通り、
今年の夏、5年目にして目標部数を達成し、貯めたお金で、
これから清掃会社を始めたいといっているそうです。
驚くべきことが、現在70歳という年齢。

路上生活から起業を果たすまで、ビッグイシューの仕組みが
なかったら出来なかったこと、そして、
ただ、立っていれば売れるというわけではなく、
本人の頑張りがなければ成し得ないことだと思います。

佐野さんもこのような例は稀とおっしゃりますが、
こうした、チャンスを作る機会をホームレスの方に提供している
ビッグイシューの仕組みは素晴らいいものだと思います。

また、どんなに小さなチャンスでも活かせる人がいるといことを
改めて感じました。

現在、厚生省のまとめによると2011年3月時点で、
10,890人(ネットカフェ難民や車上生活者は除く)ものホームレスの
方々がいらっしゃるそうです。

ただでさえ就労するのが大変な状況な中、
一旦、家を失うと、職を見つけることが更に厳しくなり、
その後、社会へ復帰する道を絶たれてしまうのが今の日本の現状です。
しかし、そうした方々に手を差し伸べている企業があります。
ホームレスの救済ではなく、仕事を提供し自立を応援しているのが
有限会社ビッグイシュー日本さんです。

始まりは1991年のロンドンで、日本では2003年9月に大阪からスタートしました。
事業の内容は、街中で販売者さん(ホームレス)の方が、
300円の雑誌を売り、その中の160円が販売者さんの収入となります。
そのため、頑張れば、頑張った分だけ、自らの売上となり、そのお金が貯まれば、
路上ではなく、宿に泊まることができます。そして、収入が増えれば、
家を借り、職につける可能性も出てくるといいます。
しかし、実際に販売者さんにお話を聞くと、ただひたすら買ってくれるお客様を
待つと言うのは、非常に大変なことで、時には心が折れそうになるそうです。
ホームレスであるということをカミングアウトしなくてはいけない、
中には心無い言葉をかけて行く方がいたり、また、日常的にタバコの
火を投げられる、つばをかけられるなどの行為もあるそうです。

しかし、一方で、応援してくださる方も多くいると言います。
暑い日も寒い日も、決められた場所に立ち続ける姿に、
"販売者さんの姿勢をみて、一生懸命さに勇気をもらった"、"逆に自分が励まされた"
等の投書がビッグイシュー日本さんには多く寄せられます。

最近は、ホームレスが若年齢化になっており、販売者の平均年齢が
リーマン・ショックを挟む2年間で56歳から45歳へと11歳も若くなりました。
しかし、多くの人はまだ、希望を捨てず、ビッグイシューにやってくると言います。

現在は、他のNPO団体や行政、応援したいという企業も増えてきています。
然しながら、市民一人ひとりが自分がいつそうなってもおかしくないという
意識を持って、こういった人達の社会復帰を手助けするような仕組みを
作っていかなくてはいけないとビッグイシューの方は語ってくださいました。

被害を受けるのはいつも弱者です。
しかし、それらを何らかの形で解決していかなければ、国は益々住みにくく
そして、不安と孤独を抱えた人が増えてきます。

今まで、私たちは国がなんとかしてくれると思ってきました。
しかし、現在日本は、多くの問題を抱え、国や行政だけでは解決できない、
手が回らない問題が山積しています。
今後は、私たち一人ひとりがこういった現実に目を向け、
もっと、積極的に解決策を考えることが重要になると考えます。

次回現場ドキュメントでは、ビッグイシューの活動について詳しくご紹介します。

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