2011年9月アーカイブ

「当店では品質強化月間に取り組んでいます。
お預かりした衣類の仕上がり、スタッフの対応等、
当店のサービスでお気づきの点がございましたら仰ってください」

いつも利用する近所のクリーニング店。

のんびりとした以前の雰囲気は一変、
スタッフの対応も素早く、丁寧なものに切り替わりました。

理由は競合店の出店ラッシュ。

徒歩10分圏内だけでも5店は見かけますが、
中でも、繁盛しているお店があります。

人気の秘密は衣料品等の「保管サービス」。

「ワンルームマンションなどではクローゼットが狭い」
という単身世帯の声をくみ上げ、専用倉庫で保管する同サービスは
4月開始以来、3カ月間で7万2千の注文が集まったそうです。

運営するのは創業55年、東京23区を中心に140店舗展開する「喜久屋」。
先日同社を取り上げた記事を見かけたのですが、
その中で「クリーニング市場が縮む中、社会の変化に合わせて変わらないと
生き残れない」と社長は語っています。

成熟市場で新たな顧客を獲得している例は他の業界でも見受けられます。

生命業界 ―

「自分のペースで保険を選びたい」という需要が急増。

伝統的な訪問営業が縮小する大手をしり目に、
複数の会社の商品を取り扱う小売型の店舗販売が急拡大。

様々な商品を比較しながら自分の生活設計にあった保険を選べる点が
支持され、「保険の窓口」(運営会社:ライフプラザホールディングス)
の10年度の新契約高は9450億円と三井生命、朝日生命を上回るほどに
成長しています。

二つの事例に共通しているのは「顧客が望んでいること」を掴み取る力。

前回から「この人に聞く」にご登場頂いているカクヤスも同様、
「真に顧客にとって価値あるもの」を見出そうとする
佐藤社長の信念と挑戦があったからこそ、今の成功があります。

成熟市場で新たな活路を切り開くために ―

「いかに売るか」という成長期の考え方を転換し、
「顧客は本当に何を望んでいるか」という発想から事業の在り方を
再構築することが多くの企業にとって急務なのではないでしょうか。


先日、目的もなく本屋に立ち寄った際、「裸でも生きる」という書籍が目に留まりました。
以前なら、気付かなかったかも知れませんが、
震災以降、大事なものの優先順位や価値観に変化が起きているからなのか...
手に取り、購入。

著者は、バングラデシュで製造したファッション・バッグを日本で販売している
株式会社マザーハウス代表取締役の山口絵理子さん。

国際機関で開発援助に携わる仕事をしたい。
山口さんは、22歳で初めてバングラデシュを訪れ、そして現地で暮し、
経済格差の激しいと言われる途上国の現状を目の当たりにしたそうです。

最初は、学校を作ろうと考えたそうですが、
それよりも「現地の素材を活かせる事業が必要である」と考え
メイド・イン・バングラデシュのファッション・バッグの工場を作ることを決心。

-- 何故、バッグなのか?

現地で、コーヒー豆を入れるための麻袋に使われているジュートという植物に出会い、
調べていくうちにジュートの生産はインド・バングラデシュが全世界の90%を締めて
いることに気が付きます。さらにジュートという植物はとても環境に良い繊維素材。

この国の世界に誇れる素晴らしいジュートを使い、
現地で製造し、最終商品として輸出することができれば・・・。
日本人が驚くようなかわいいバッグが作れたら・・。

「そうすれば、経済の基盤をしっかりと持った持続的な協力ができる。」

そう思い、
なんとかしてそれを実現したい!
やってみて、それがたとえダメだったとしてもいいじゃない。
途上国の制度や政治的な問題はなかなか変わらいけど、
現地の人達が「自分たちは世界に誇れるものを作ることが出来ている」という気持ちを
蓄積していってくれれば、きっといつか変わるはずだと...。

しかし、ジュートという繊維も初めて、バッグの製造、販売も始めて。
そんな山口さんが、ジュートの生産者探し、日本で通用する品質のバッグをつくる。

実際、動き出してみると、本当に多くの難しい問題にぶち当たったそうです。

政情不安の中、デモやストライキなどが起きます。
デモが収まり、やっと道路封鎖が解け、急いで工場に向かうと、
山口さんが買った素材も、デザイン画も、工場のみんなが誰一人としていなくなっていた。
そして、工場のパートナーにも電話をかけても、いつまでたってもつながらない。
「裏切られたんだ・・・」

そして、その経験から自らの手でコントロールできるよう自社工場を作り、
朝一番で工場に行き、一番遅く工場を出る。
このことを山口さんは黙々と続けたそうです。

現地の社員の方々と一緒に働き、当たり前のことをやり続ける山口さん。
みんながそんな山口さんの姿を見て、まねし始める。
こうして、言葉だけでは伝わらない"途上国発が世界に誇るブランドを作りたい"
という思いを、今も全身で伝え続けているそうです。

「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という理念を抱き、24歳で起業して6年。
バングラデシュの自社バッグ工場を運営し、直営店は8店舗に。
また百貨店でも販売されるまでになっています。

  経済の基盤をしっかりと持った持続的な協力をしたい
  途上国発が世界に誇るブランドを作りたい

この強い思いを実現するために、問題や壁にぶち当たっても、
その度に、「解決できないことはない、きっと手段はあるはず」と
考えて、行動し、また考え、そして行動することを繰り返している山口さん。

強い思いがあるから、考え抜き、事を積み重ねていく。

「裸で生きる」とは、
自分が何をしたいのか、自分はどう生きたいのかに
自分の明確な意志を持って生きるということなのだと思います。

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