2011年3月アーカイブ

現在は地震の影響で休園中であるが、ディズニーランドのリピート率の高さは有名だ。
この不況下においても、いまなお90%近くのリピーターを抱えているといわれている。
客の心を虜にするディズニーランドの魅力とは何か。たとえば、数年ごとに登場する
新しいアトラクションやシーズンごとに装いを変えるパレードなど、ファンを飽きさせない
演出や戦略はもちろん素晴らしいが、一番の魅力は、私は、キャスト(従業員)のホスピ
タリティにあると思っている。

さまざまな著書の中でもキャストによる心温まるエピソードが多数紹介されているが、私
の友人が、噂は本当かとこんなことを聞いてまわったという。「ダッフィーのぬいぐるみは、
どこで買えますか?」。菓子を売っている人、掃除をしている人、アトラクションの案内を
している人......ディズニーランドの園内で、出逢ったキャストに端から声をかけたそうだ。
ダッフィーというのは、ディズニーシーに登場するクマのぬいぐるみをモチーフにしたキャ
ラクターのことで、グッズ類もお隣のディズニーシーでしか購入することができない。この
質問をあえてディズニーランドでしたところ、すべてのキャストが「ここでは販売していない」
ということを即答し、販売していないことを丁寧に詫びたという。なんと、警備員のおじさん
までもが、だ。すべてのキャストが、その事実を把握していたということに驚いたという。

元々ディズニーランドが大好きで働いている方々がほとんどなのかもしれないが、"ファン
なら知っていて当たり前"のひと言では片付けられまい。ここには、自分の持ち場の仕事
だけをしていればいい、という姿勢のキャストがひとりとしていないのだ。マニュアルだけ
ではなく、個人的にも施設のことを勉強しているのだろう。最高のおもてなしでゲストを
迎え入れたい、という思いが皆から伝わってくる。「目の前にいる人の"困った"を解決し
てあげたい」、「楽しい思い出をたくさん作って帰ってもらいたい」という気持ちが幾重に
も重なって、"夢の国"というスペシャルな空間を作り上げているに違いない。

訪れる者をハッピーな気持ちにさせるのは、ほかでもない、マニュアルを越えたキャスト
のおもてなしの心ではなかろうか。この話を聞いて、ディズニーランドが稼働し始めたら、
しばらくぶりにまた足を運んでみたくなった。

震災の影響で経済活動の縮小が大いに懸念されるが、こんな時だからこそ、真のおも
てなしというものを改めて考える必要がある。単なる商品やサービスの提供だけでは、
もはやこの苦境は乗り越えられないであろう。お客様が望むこと、喜ぶこと、感動する
ことは何なのか――。人の心をつかむプラスαの武器があれば、どんな時代であろう
と必ず顧客はついてくるはずだ。いまこそ、企業としての真価が問われている。


最近、出先での接客や応対態度が気になって仕方ない。今まであれば、たとえばむっと
するような出来事が起こったとしても、「多くを求めても仕方ない」と諦めの方向に気持ち
が向いていたが、最近は「次は利用しない」という切り捨ての方向に気持ちが働くように
なってしまった。仕事柄、穿った見方が身に付いてしまったのかとも思っていたが、冷静
に考えてみるとそれだけが理由ではないということに気付いた。

たとえば、近所にある某有名ファストフード店の例。数年前にわたしは、この店で素晴ら
しい接客をするスタッフに出会ったことがある。学生ぐらいの年頃の女性で恐らくアルバ
イトのスタッフだったのだろう――マニュアルではない"心"のこもった笑顔と応対に大変
感動したのを、今でもよく覚えている。その方の接客に惚れ込み何度となく足を運んだ
が、ほどなくして彼女を見かけなくなってしまった。代わりに入ったのは、留学生と思しき
外国人スタッフ。文化の違いもあるのだろうが、この方がまた驚くほど無愛想であった。
何度通っても直ることのない高圧的な接客や言葉遣いがどうにも嫌で、わたしはその店
を利用しなくなった。なぜか。代わりのお店なら、近所にいくらでもあるからである。

病院だって立派な接客業だ。数ヵ月前から目の調子が悪く、近所の病院に駆け込んだ
のだが、そこの先生がこちらの話をどうにも聞いてくれない。なんとなく処方された薬を
点眼し続けたのだが、一向に治る気配がないので別の病院にかかることにした。が、
ここの先生がまた輪をかけてさらにひどい。治療で通院しているにも関わらず、カルテ
にも目を通さず「健康診断ですか?」と聞いてくる。同じ医者に一体何度イチから症状
の説明をすればよいのか。営業マンで言えば、お付き合いのある取引先に「お宅は何
を販売している会社ですか」と今さら訪ねるのと同じことである。診療の応対もあまりに
ひどく、治療中ではあったが、やはり通院するのをやめてしまった。なぜか。代わりの
病院なら、ほかにいくらでもあるからである。

都心にいる限り利用客や患者に困ることはない、と高を括っているのかもしれない。
実際、その時限りの客や患者も多いのだろうが、いつまでもあぐらをかいた商売をして
いてよいものか。景気が落ち込み、今後ますますわたしのようにシビアに考える客や
患者が増えていくことだろう。

代わりはいくらでもある――。多くの人財や組織があふれる世の中で、ぜひとも選ばれ
る存在になりたいものである。自分も、きゅっと身の引き締まる思いがした。

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