2010年8月アーカイブ

企業を訪問する度に、"社風"というものをつくづく感じる。同じ会社であっても部署が異な
るだけでまったく雰囲気が違う、なんてこともあるので、正確に言うと私が感じているの
はもっと小さなコミュニティの"空気感"なのかもしれない。同じような業種、部署であって
も、「真面目」「丁寧」「好奇心旺盛」「ユーモラス」など、職場によってカラーは様々だ。

思うに、"空気感"というものは、そこにいる人によって作り出され、人を介して伝播するも
のではなかろうか。上司や先輩の背中を見て、人は育つからだ。よい環境にあれば、よ
い人財も育ちやすいというもの。よい面ばかりではなく、悪い面でもまた同じことだ。すな
わち、『人を磨く』ということは、組織を育てるということに直結する。

東京・中央区には老舗企業が密集しているという話を以前もしたが、ここの経営者たちに
は皆『人材は大切な財産』という共通の理念がある。物を買うのは人、物を売るのも人。
顧客との長い付き合いとは、従業員と客との間に結ばれた強い信頼関係があってこその
賜物だ。客から信頼される人財こそが、老舗の暖簾をこれまで支え続けてきたのだろう。
それを感じているからこそ、これらの老舗企業では従業員を"宝"として大切に育てている。

では、従業員に求めるものとは何か。それは、完成された知識ではなく、感覚であり、感
性であり、相手の気持ちを汲み取る"心"なのだそうだ。確かに、老舗の商品には職人の
心が伝わってくるし、サービスにも心からのもてなしを感じる。現代社会に蔓延する「効率
化」だけでは片付けられない強い信念が、今なおそこには息づいている。

人を大切にする"心"こそが、長寿の秘訣。こう感じてしまうのは、果たして私だけなのであ
ろうか。

『横浜』と聞いて、皆さんはどんな街並みを思い浮かべるだろうか。異国情緒ふれる港
町、華やかで独特な雰囲気を持つ中華街、高層ビルやモールが建ち並ぶショッピング
タウン......。小さなエリアに、これほど特徴的な"顔"がいくつも混在する街は、日本中を
探してもそうないだろう。この街の雰囲気は、史跡や名刹が点在する京都や鎌倉とも違
う。新しいものであふれる、雑然とした東京の街とも違う。横浜は、歴史と革新の両方が
絶妙なバランスを保って共存しているエリアなのだ。

開国以来、日本の窓口として栄えてきた港町。150年という歴史が築いた美しい街並み
は、老舗で例えるならば、守り抜いてきた誇り高き伝統だ。時の流れと共に淘汰された
景色ももちろんあったのだろうが、横浜の街には、歴史ある風景が今も大切に遺されて
いる。これこそが、"横浜ブランド"の礎となっているに違いない。

多くの若者を惹きつける流行のスポットは、伝統に吹き込む新しい風といったところか。
海外で人気のカフェやスイーツのお店が日本初進出の地として『横浜』を選ぶ例が多い
のも、"街"としてのブランド力の強さと、新しいものを歓迎する港町ならではの開放的な
気質が故のものだろう。

いつ訪れても変わらない美しい街並みと、次々に登場する話題の新スポットこそが、
人々を何度も惹きつけるこの街の魅力。街の表情をなにひとつ壊すことなく、常に進化
を遂げていく様は、企業としてもぜひ見習いたいところだ。

開国150周年を迎えた現在も、発展し続ける街。横浜という街のあり方は、今なお"現役"
の老舗企業のそれと、実によく似ている。

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