2010年6月アーカイブ

近頃"食べるラー油"が注目を集めているが、私の地元・長野県には江戸の中期から
続く「八幡礒五郎」という七味唐辛子の老舗がある。礒五郎の七味は、地元では大変
馴染みの深い調味料のひとつで、自宅の食卓はもちろんだが、改めて思い返してみる
と、食堂、蕎麦屋、どこに行っても当たり前のようにテーブルの上に並んでいた。
ちなみに、八幡礒五郎が善光寺のお膝元で七味を売り出したのは280年近くも前の
ことだ。最近は長野を代表する土産物として観光客にも親しまれているそう。地元出身
の者としては喜ばしいことだが、全国の百貨店や高級スーパーなどでも"礒五郎の
七味"が購入できるようになった。

ご存知のない方もいると思うが、礒五郎といえば、唐辛子のイラストが入った赤いブリキ
缶の"七味"がお馴染み。定番の七味唐辛子だけかと長いこと思っていたのだが、
先日、ホームページを見て驚いた。見たことのない商品が多数展開されていたのだ。
柚子入り、胡麻入りの七味を筆頭に、炒め油、ポン酢、オリーブオイル(もちろんどれも
唐辛子入り)と、様々なシチュエーションで幅広く使える調味料類が充実していた。
お馴染みの七味も毎年"イヤーモデル"と呼ばれる限定パッケージを展開。定番の商品
にも稀少感を出し、ファンの心をくすぐっている。
さらにはブリキの七味缶をアレンジしたプチ缶携帯ストラップ(缶の中には実際に七味を
入れることも可能)や、屋号をあしらったトートバッグ(色は唐辛子色と山椒色の2色を
展開)といった、グッズ類の販売も。先日、同社の方と話す機会があったのだが、
これらのグッズは若い層に大変好評とのことで、県外からの問い合わせも多いという。
昨年登場した七味素材入りの色鮮やかなスイーツ"マカロン"も、オリジナリティがあって
おもしろい。

 礒五郎の商品は、どれも独創的で、アイディアとユーモアにあふれたものばかりなの
だが、素晴らしいのは、すべて同社の伝統の技法やブランドを生かしたものであるという
こと。七味という昔ながらの調味料を"今"の食生活にどう組み合わせるか。一見"渋い"
ともとられがちなデザインを、若年層にも受け入れられるにはどんなアイテムにしたら
よいか――。
 
"七味"という創業当時からの商品を軸に持ちながらも、そこからブレずに、かつ新しい
ジャンルを開拓していく様は、"地元"という贔屓目抜きにしても、目を見張るものがある。
伝統と革新を見事に融合させ、オンリーワン企業として発展させた好例ではないだろうか。

「この夏、購入したいファッションアイテム」の一位は「ワンピース」。
あるショッピングモールが独自に行ったモニターアンケートの回答だ。
驚くべきは、その購入予算。
「予算は3,000円まで」という回答の多さに、正直、衝撃を覚えた。
百貨店で買おうものなら、倍どころか、恐らく3倍、4倍の予算が必要であろう。
まさしく、ファストファッションの浸透を痛感するアンケート結果であった。

ショッピングモールの売り場を覗いてみると、あるショップではワンピースが実際に
2,980円で販売されていた。
Tシャツは980円、薄手のロングコートも4,980円――MADE IN CHINA。
デザインもトレンドを意識した作りで、かわいいものばかりだ。
あれも、これも購入したくなる気持ちがわかる。
が、素材や縫製に関しては値段相応、といった感が否めない。
安さは魅力的ではあるが、何シーズンも繰り返し着用するとなると、
やや不向きかもしれない。

デフレ不況が進み、アパレル業界にも大量生産・低価格路線の波が押し寄せて
いるが大手下着メーカーGUNZEは、創業以来"国内生産"を貫いているという。
元々製糸工場から始まったという同社は、戦後に下着メーカーとして発展。
創業110年を超える老舗企業でもある。
男性下着の分野で業界シェアのトップを走り続けるものの、最近では若い顧客層が
つかめず悩んでいたそうだ。

そんな折、この2月に、若者の街・原宿にオープンさせたのが、直営の下着専門店
「ボディワイルド」だ。
店内には、これまでの「地味」なイメージを払拭する、カラフルでデザイン性のある
商品がずらりとディスプレイされている。
実に10年ぶりのモデルチェンジというが、肌ざわりの良さや履き心地は変わらない。
アーティストとのコラボパンツといった、ポップで個性的なデザインの商品も
充実している。
さらに目をひくのが、自分好みのオリジナルパンツが作れる「カスタムパンツ」コーナー。
自在に選べる色やデザイン、腰ゴムやポケットなどの組み合わせは、
100万通りにも上るとか。
カスタムパンツは1枚2,100円、2枚で3,150円。
決して"安い!"とは言い難いが、オンリーワンにこだわるオシャレな若者からの
評判も上々だという。

ファッションアイテムは"使い捨て"と割り切ってオシャレを楽しむ――これも時代の
潮流なのかもしれないが、こだわって選んだ物ほど、「大切に使いたい」と思うもの。
不況が長引くこのご時勢だからこそ、「良い物を長く」という精神を忘れたくはない。
パンツのような消耗品の類でも、きちんとした生地や縫製の物であれば、結果的に
長持ちするというものだ。
安い物を何度も買い替えるよりも、案外安上がりだったりして――。

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