2010年5月アーカイブ

流行りのファストファッションブランドのオープンラッシュが影響だろう。
銀座の街で見かける若い女性の数がぐっと増えた気がする。
当初は、「大人の街・銀座」に似つかわしくないとの声もあったが、今ではすっかり

街にも馴染んだ様子。
その勢いは止まらず、ファストファッションの波は、100年企業がしのぎを削る

百貨店業界にも及んでいる。

 

「百貨店はこうだ、と決めつけているからダメになった。百貨店も、時代に合わせて

変化していかなくては」
こう話すのは、大手百貨店・大丸と松坂屋を傘下に持つJ・フロントリテイリングの

奥田会長。
今年は、松坂屋が呉服店からデパートに業態転換した1910年から、数えてちょうど

100周年の年。来年2011年には創業400周年を迎えるという、業界きっての老舗企業だ。
会長の奥田氏は、百貨店という概念にとらわれず、売場改革に尽力してきた方で、
セールの前倒し商戦を積極的に仕掛け、大丸梅田店には紳士服の量販店・はるやま

商事をテナントとして誘致したことでも知られている。

 

こうした新しい動きに業界も触発されたのか、新宿の高島屋店内にも「ユニクロ」が

オープンした。こちらも創業1831年と、100年を優に超える長寿企業だ。
対する銀座・松坂屋も、4月に米カジュアル衣料品チェーンのフォーエバー21を

オープンさせたばかりで、開店初日には1000人もの行列ができたという。
先日両店舗に伺ったが、どちらも大変なにぎわいをみせていた。

 

一方、低価格路線には走らず、依然として高級なイメージを守り続けているのが、

創業300年以上・老舗三越を抱える三越伊勢丹グループ。
「消費者が三越と伊勢丹に求めるものは低価格が売りのファストファッションではない」

というのが見解のようだ。
こういったこだわりの姿勢が改めて成果を生むにはしばらく我慢が強いられそう、

との声もあったが、ここに来て少し動きが見え始めている。

業界内での客単価が上がり、景気が多少戻ってきた、というのだ。

 

たとえば松屋銀座では、昨年初日に完売となった9800円スーツが、今年はセール

から1週間経った後も売れ残っていたとか。
代わりに3、4万円台のオーダースーツが人気を呼んでいるという。
競合店においても同じような傾向にあるそうだ。

 

4月の百貨店売上高は26ヵ月連続前年割れを続けているが、減少率は3%台に

とどまり、持ち直しの兆しを見せ始めている。
100年以上もの間当たり前とされてきた、業界内の"常識"を覆す革新的な試みと、
長年培ってきたイメージを守り続ける老舗のこだわり。
数百年の歴史を刻む百貨店業界の不況商戦は、果たして、どちらに軍配が

上がるのか。
今後の動向が気になるところである。

今回の「この人に聞く」の中で、3000名の客の名前を覚えているという、ベルマンの

方の話があったが、私は、日ごろ飲食店関係の方に"プロ"を感じることが多い。

 

先日、中国料理店で店主の方に「この間、あちらの席で、あの料理を食べて

いらっしゃいましたよね」と声をかけられ、びっくりした。
店に訪れたのはそれが2度目で、常連というわけではない。
しかも、この方はホールにいたのではなく、奥の厨房で鍋を振っていたのだから、

尚のこと驚いた。小窓からテーブル席を覗いた際、私と一瞬目が合ったのを

覚えていたのだそうだ。
自分のことを覚えてくれている、というのはやはり嬉しいもので、「少々遠くてもまた

食べに来ようか」、などと単純にも思ってしまう。

  

夜は日替わりのコースのみで展開しているが、どの客にどのメニューを出したかも

覚えているとのこと。
次の来店の際は、前回と同じような料理内容にならないよう、気を配っているという。
聞けばこの店主、とある有名店で総料理長をも務めた方。
どおりで、味も抜群に旨い。

 

都心から随分と離れた郊外という立地にも関わらず、連日客であふれる盛況ぶりだ。
料理の味がいいのはもちろんこと、店主の細やかな心配りもまた、店の人気にひと役

買っているのだろう。
「人気店」と呼ばれる店ほど、こういった経験は心なしか多いような気がする。
皆驚くほど客の顔を覚えていて、その度に感心させられるばかりだ。

 

数あるお店の中から消費者がその店を選択するには、それ相応の理由がある。
例えば飲食店なら、味プラス価格、立地、雰囲気、接客。
他店にはない「付加価値」をどれだけ多く加えられるかが、重要だろう。
ベルマンやフロントクラーク、シェフやウェイターといった異なるジャンルのスタッフで

業務を分担しているホテルにおいては、それぞれが"プロ"である必要がある。
一人一人の役割が、再訪のきっかけに大きく起因する分、個々に課せられる責任も

重いというものだ。

 

富士屋ホテルの安藤総支配人は、「プロが集まる組織になれば、ホテルは強くなる」

とおっしゃったが、これは、企業という組織においてもやはり同じであろう。
その他大勢に埋もれず、一人一人がその業務のプロであれ。
スペシャリストの集団であれば、企業はもっと強い組織になる。

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