2010年1月アーカイブ

先日、数年ぶりに劇団四季のミュージカルを観劇した。
平日にも関わらず、劇場は満席。
――そういえば、数ヵ月先までチケットが売り切れで、随分前から予約をして

いたのだっけ。
満席の会場を見回しながら「どおりでチケットが取れないわけだ」と、思わず

納得してしまった。

 

歌はもちろん、衣装や演出など、すべてが素晴らしく、観劇中、強い感動を

何度も覚えた。
「以前見た時よりも格段に進化している」と、断言してもいい。
「次はいつにしよう」と、帰り道には次の予約のことでもう頭がいっぱいに

なっていた。

 

そんな折、四季の代表であり、演出家でもある浅利慶太氏が、経営や劇団員の

育成について語っているテレビ番組を観る機会があった。
劇団への入団は狭き門だが、入団したからといって容易に舞台に上がれるわけ

ではない。
その代わり、実力のある者には、たとえ新人であっても舞台が用意される。
劇団側は様々なレッスンやカリキュラムを用意し、団員の育成、レベルアップに

取り組み、劇団員たちは、自分の "役" をもらうために、毎日必死に練習に励む。
この相乗効果により、四季の舞台は日々ブラッシュアップされていくのである。

 

何度観ても、新しい感動がある。
これこそがロングランヒットを飛ばし続ける、四季の強みであり魅力なのだろう。

 

「一人のスターを出すのではなく、劇団全体のレベルを上げることが大切」と語る

浅利氏の姿が印象的だった。
確かに、四季には宝塚のような "トップスター" はいないが、舞台上の誰に目を

やっても、主役を見ているような存在感があるのだ。
不況という時代にありながらも、この7年間、四季では毎年200億円以上の売上高を

キープしているという。

 

組織全体のレベルを上げるために徹底した教育を施し、優秀な者にはさらなる

ステージを与える。
これこそが、常に最高のパフォーマンスで魅了し続ける四季の成功のメカニズム。
今回お話を伺った平田氏のファイテン株式会社も、四季と同じように
キャリアや年齢に関係なく、実力のある者やいいアイディアを持つ者には
誰でも "舞台" に上がれるチャンスが与えられる。


目標があることで、モチベーションが上がるのは劇団員も社員も同じこと。
社員の育成と同時に、活躍できるステージを用意してあげることも、
組織の大切な役割のひとつなのだ、と深く感じた取材であった。

もはや単なるブームではなく、"国民食"の座にまで登りつめたラーメン。
どんなに不便な立地であっても、どんなに営業時間が短くても、
人気店と呼ばれる店の前には、その味を求めて開店前から長い行列ができる。
外食産業が軒並み苦戦を強いられている、不況の時代とはとても思えない光景だ。

 

新たな行列店が続々と登場する一方で、最近パタリと名を聞かなくなった

有名店も多い。
入れ替わりの激しいラーメン業界で、5年、10年と変わらず行列を保ち続けることは
人気店の仲間入りを果たすこと以上に難しいこととされている。

 

前に、ある店の店主と話す機会があった。

オープンから10年以上が経った今も、行列の絶えることのない人気店だ。
その方も、今回お話を伺ったファイテン株式会社の平田社長と同じく、
全くの異業種から参入された方であった。


それまでラーメンをほとんど食べたことのなかったという店主が
他店での修業経験もなく店を構えたという話に、大変驚いたことを覚えている。
「せっかくの素人なんだから、人真似なんかしたらもったいない」
野菜、肉、魚介、ありとあらゆる素材でだしを取り、
ありとあらゆるだしとだしを組み合わせ、
自らの手で、一から今の味を完成させたという。


――人からみたら突拍子もないこともあるかもしれないけれど、
知識も経験もない素人の自分なら、
誰も思いつかないような新しいアイディアも思いつくかもしれない。

 

既成概念にとらわれない独自目線を貫き、唯一無二の存在であり続けている同店。
「アマチュアは知識がないから、ゼロから挑戦できる」
平田社長と、全く同じ発想で成功を収めた。

 

ブームはいつか終わるもの。
既存の人気商品に頼り、流行にすがっていては、企業の存続が危ぶまれる。
――できるかできないかを考えるのではなく、まずは試してみることだ
平田社長の言葉が深く胸に刻まれたインタビューであった。

このアーカイブについて

このページには、2010年1月に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

前のアーカイブは2009年12月です。

次のアーカイブは2010年2月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。