2009年2月アーカイブ

全国から旅行ツアーが組まれ、海外からも多くの観光客が訪れるという
人気の動物園――旭山動物園にもかつて存続を危ぶまれていた時期があった。

 

94年、飼育動物が相次いで感染症に感染。
その影響から、96年には年間入場者数が過去最低の26万人に。
廃園間近とも言われていた"崖っぷち"の動物園の名を一躍有名にしたのが、
動物の自然な生態が見られる「行動展示」である。

入場者数の減少に頭を抱え始めたのは70年代後半頃から。
大型レジャー施設やテーマパークに客足を奪われ、
80年代にはすでに苦境の時代を迎えていた。

 

「どうすれば動物の素晴らしさが伝わるのか」
「動物園の存在意義とは何なのか」

 

低迷する現状を打開するため若いスタッフを中心に新プロジェクトが組まれた。
自由な発想と議論ができる環境の下、挙げられたこの時のアイディアこそが
動物園存続の危機を救った「行動展示」の礎となっている。

 

「お金があったらこんな動物園を作りたい」
理想の動物園を作るために
「お金がなくても今すぐできる」地道な活動

 

――飼育係が直接お客さんに動物の解説をする
ワンポイントガイドも開始した。

 

入場者数が過去最低を記録した翌年の97年に
長年の夢であった行動展示をする施設作りにいよいよ着工、
新施設が完成する度に、入場者数は増え続けていった。
10年後の06年度には入場者数304万人を記録。
同動物園の現在の人気ぶりは周知の事実である。

 

3つの動物園の管理運営も手掛ける「横浜市緑の協会」理事長の橋本氏は
今回のインタビューの中で「事業に携わる人がキーになる」と述べている。

旭山動物園で新プロジェクトの責任者を務めたのは
ほかでもない現園長の小菅氏であった。

また「現場に発生している問題を知り、
変化があるまで地道に取り組み続けることが大事」とも。
旭山動物園の見事なまでの再生、復活劇は
スタッフたちの発想力と地道な努力の賜物。

 

橋本氏の話を伺ってこの成功事例がまず思い浮かんだ。

経営破綻や派遣切りなど、景気低迷による暗いニュースが飛び交う昨今。
「100年に一度の経済危機」と騒がれているが、東京ディズニーリゾートを経営する
オリエンタルランドの業績は、不況をものともしない好調ぶりだ。
1月末の「2000人・大量雇用」発表からも、その勢いが伺える。

 

3月期の連結決算は、売上高3852億円、純利益208億円、
純利益は前期比41%増で、売上高ともに過去最高となる見通し。
年間入園者数も過去最高の2710万人に達する見込みだという。

 

今年度の開園25周年を前に
昨年夏には「東京ディズニーランドホテル」、
秋には常設劇場「シルク・ドゥ・ソレイユ シアター東京」を開業。

 

アニバーサリーイベントの展開や限定グッズの販売などが入園者数増加の大きな要因か、
と思いきや地方からの集客アップにはディズニーキャラクターによる全国行脚などの
プロモーション活動が大きく貢献したといわれている。

 

"天下のオリエンタルランド"が
陰ながら地道な営業活動に奔走していたとは頭が下がる。

 

リピーター率90%以上を誇る"夢の国"ディズニーリゾート。
子どもの頃から変わらない演出に懐かしい思い出を重ね、
訪れる度に装いを変えるアトラクションに胸を高鳴らせる――。
「何度でも来たい」「何度来ても飽きない」と思わせる
ディズニーリゾートの魅力は、そんなところにあるようだ。

 

今回お話を伺った橋本氏が理事長を務める「横浜市緑の協会」は
公園や動物園などの施設の管理運営を手掛ける財団法人。
公益性の高いサービスを手掛けるという点でオリエンタルランドとは異なるが
魅力ある施設づくりのために事業計画を練り、
集客アップに尽力するという点では同じものを感じる。

 

レジャー施設が軒並み業績不振にあえぐ中、
"攻め"の姿勢を貫き通したオリエンタルランド。
地道な活動と攻める姿勢を忘れずに
市場のニーズに的確に応えていけば
100年に一度の経済危機も
100年に一度のビジネスチャンスに
変えることができるのかもしれない。

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