2008年9月アーカイブ

(2)雇用の安定はキャリアの安定から

 

 「何が起こっても不思議でない時代」。ある日突然働いている環境が一変する。

 

歴史も体力もある一流優良企業に勤めて、隆盛を謳歌していたサラリーマンが一瞬にして職場を失う。

 

社員も社員も一切の力が及ばない経済環境の変動や、たった一握りの人間が引き起こした不祥事、目覚めたら自分の会社が外資系になるなど。今日、決して珍しいことではない。

 

金融機関であろうが、情報会社であろうが、あるいはメーカーであろうが、それは、まさにいつ起きてもおかしくない事態なのである。

スタンフォード大学John D,クランボルツが提唱したプランド・ハップンスタンス・セオリー(Planned Happenstance Theory:計画された偶然理論)というものがある。

変化の激しい時代には、「キャリアは基本的に予期しない偶然の出来事によってその8割が形成される」とする理論だ。

 

予測のつかない環境の変化に対応するためには、キャリア開発の計画に固執しすぎず、むしろその変化に対応できる"能力"を備えるべきである。そのため、個人が自律的にキャリアを切り開いていこうと思ったら、偶然を必然化する、つまり、偶然の出来事を自ら仕掛けていくことが必要になってくる。

 

そのポイントは次の5つであると述べている。

   好奇心(Curiosity):新しい学びの機会を探求せよ

   持続性(Persistence):失敗に負けずに努力し続けよ

   柔軟性(Flexibility):姿勢や状況を変えよ

 ④楽観性(Optimism):新しい機会は必ずやって来て、それを自分のものにすることができると考えよ

 ⑤冒険心(Risk Talking):結果がどうなるか見えない場合でも行動を起こせ

 

いまや、安定した雇用先を選ぶかではなく、如何に安定したキャリア形成力を自ら築いてくかが、結果として雇用の安定につながるのである。

 

終身雇用が崩壊した現在、社員の雇用の安定という概念を変え、社員一人一人に自らのキャリアを切り開く、キャリア形成力の強化がこれからの企業にとっての雇用の安定を社員に保証することになるのではないだろうか。

 

On The Business Training 協会 栗田 猛

(1)人事管理の移り変わり


経済環境が、ヒトと組織に与えるインパクトは何かを明確にし、人事部は「わが社をどの方向に導くのか」を決断しなければならないでは、人事部機能は時代とともにどのように変遷してきたのかを見てみよう。


『1960年代から70年初頭』
高度経済成長時代である。この時代は同時に、高インフレの時代でもあった。
人件費をコストコントロールするため、給与構成の中に手当や給与を含めるという習慣が確立する。また、ベアは仕方ないとしても、それがすべて退職金に跳ね返ったのでは退職金負担が急増するため、退職金からのベア引き離しが制度化された。
この時代の人事部の機能は、コストをいかにコントロールかであった。


『1970年代』
1973年に、第1次オイルショックが起こった。
企業の成長が止まった結果、ポスト不足が、強い序列意識をインプットされたサラリーマンにとって、モラル・モチベーションのダウンにつながる。
人事部はこの対策として、資格制度を導入し、資格と役職を分離することにより、ポストの増加による組織の硬直化の回避をはかった。
この時代の人事部の機能は、いかにして、モラル・モチベーションダウンを回避し維持するかであった。
『1980年代』
80年代に入り日経連が定義した「職能とは、あくまで職務遂行能力のことで、職務と関係のない能力は除外される」「職務遂行能力とは当該企業が経営上必要とする職務の遂行を通じ発揮する能力のことである」という概念が一般的になった。これをきっかけに能力主義が標榜され、能力給が主流となる。
80年代後半以降は、年俸制やMBO(Management by  Objectives::目標管理)が登場し
てきた。実力をシンプルに反映する給与体系を確立した。
この時代の人事部の機能は、ホワイトカラーのモラル管理であった。


『1990年代』
90年代はブルーカラーとホワイトカラーの比率が60年代と比べて逆転。
人事部の機能としては、ホワイトカラーのコスト管理をどうするかという問題と、ホワイトカラーの中で新しい時代を切り開くコア人材をいかに確保し、育成するかが大きな課題となった。


『2000年代』
成果主義の台頭により、人事部は経営とのコミットメントの中でその存在価値が認められてきた。日本企業の人事担当役員の60%は専務取締役ないしは常務取締役であったと報告されている。経営と人事が極めて緊密化しつつあるかを物語っている。
2000年代は、経営人事が主要テーマとなる時代である。

以上でお分かりのとおり、人事部はその時々の企業を取り巻く環境の変化に応じて、その果たすべき機能を変えながら人と組織を運営をしてきたのである。

On The Business Training 協会 栗田 猛

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