2008年7月アーカイブ

『がんばれ』という言葉には心が込められていないと、

かえってその人に対して水をかけてしまうことがある。

ある一部上場会社の幹部に、現場を廻って若い人たちに「がんばれ、がんばれ」を連発する人がいた。

 

ちょっと意地悪の気持ちもあって、

そう言われた人たち30人ほどに聞いてみたことがある。

 

「会社の偉い人から『がんばれ』と言われたらどんな気持ちになりますか?」

意外なことに、半分以上の人が、むしろ悪い感情を抱いてしまっていた。

 

曰く、「高級車で乗り付けて、ふだんの仕事も見てない人から言われたくない」。

曰く、「『がんばれ、がんばれ』だけなら馬鹿でも言える」。

曰く、「あんたもがんばれよ~」。

顔ではにこやかに「はいっ、がんばります」と答えてはいるが、

実のところ心の中で舌を出しているのだ。

「がんばれ」で業績が上がるなら、こんなラクなことはないだろう。

 

では、どんなふうに励まされたら嬉しいか、数人からじっくり話しを聞いてみた。

話を総合すると、自分の仕事ぶりを知ってくれていて、

そのうちのがんばっている部分をほめられたとき、

もっとがんばろうという気持ちになるということだった。

 

「○○さん、あなたは最近△△△△△の点でがんばっているね。ありがとう」

というのがいいらしい。

私は、ある支社をおあずかりしたとき、これを自ら実行してみた。

たいして時間もかからず、確かに、従業員の表情は明るくなり、業績も上がったのだ。

 

以後、若い人たちに対してこのやり方をやってきた。

人は誰も"輝いて生きたい"という願望がある。

自分を認識してもらいたい、聞いてもらいたい。

型に嵌め、マニュアル通りに励まそう、動かそうとしても人は動かない。

少なくとも、情熱をもって仕事に取り組んでくれることはないだろう。

 

教育は調教とは根本的に異なる。

管理者にとって都合がいいように動かそうとするのは教育ではない。

「人間」という存在を考えずに、結果のみを急がせるやり方が、これまで如何に若い人たちの力をつぶしてきたことか。

教育や激励の対象は人間なのだ。  

 

 

On The BusinessTraining 協会 門田 元宏

(3)社員価値観の多様化へどう対応するか

 

顧客価値、社員価値、株主価値など、現在は「価値多様化」の時代と言われる。

グローバル化・少子高齢化・顧客や働く人の価値観の多様化等々、

我々をとりまく環境が大きく変化する中、「多様化への対応」は、

企業にとって、今後の「競争力」を左右する。  

 

日経リサーチがビジネスパーソンを対象に行った社員価値(働きがい)

調査(2004)によると、「リーダーシップ・ビジョン」「目標成果認識」

「顧客満足」「取引の透明性」「個人ストレスのなさ」「組織ストレスのなさ」が

その構成要素として挙げられている。

 

また、総務省統計局の労働力調査(2008)によると、

パート・アルバイト・契約社員・派遣社員等のいわゆる「非正規社員」の割合は

34%に達しており、雇用形態の多様化が確実に進んでいる。

 

このような「社員価値の多様化への対応」は避けて通れない人事課題でもある。

「日本人・男・正規社員・プロパー(生え抜き社員)」という、

社員一律管理の考え方を大きく変換しなければならない。

その基本は、「違い」を受け入れ、認めることである。

 

事実同質のチームより異質なメンバーから成るチームの方が創造的に問題を解決し、

多様な顧客ニーズへの対応力はすぐれているといわれる。

欧米の先進的企業では「ダイバーシティ」を経営戦略と位置付けながら、

意識改革や環境整備に力を入れている。

 

「ダイバーシティ」とは、異なる属性(性別、年齢、国籍など)や

異なる発想・価値を認め、それらをいかすことで、ビジネス環境の変化に

迅速かつ柔軟に対応し、利益の拡大につなげようとする経営戦略である。

 

日本企業においても、社員一人ひとりの多様性が不利にならず、

持っている可能性をフルに発揮し会社に貢献する成果を出せるよう、

多様性を尊重しながら取り組んでいくことが企業の今後の発展につながるであろう。

 

すなわち、「ダイバーシティ研修」「意識改革・啓蒙活動」

「柔軟な勤務形態(在宅勤務,フレックスタイムなど)」

「採用・昇進・評価制度」「キャリア開発支援」「メンター制度」 

などへの取り組みである。

 

これらを戦略的に導入・推進することにより次のようなメリットが期待できる。

・異種異能をもった人材の有効活用により組織のシナジー効果(個別の価値以上の価値を生み出す効果)を発揮できる

・多様化・複雑化する顧客ニーズへの効果的対応が可能となる

・社員の相互啓発が促進され、創造性・問題解決力が向上する

・企業そのものの競争力が向上する

・企業の社員尊重の具体的表明が可能となる

 

そのためには、まず個々人の違いや異質なことを認め、受け入れること。

そしてそれらの違いに価値を見つけること。

仕事に関係のない特質より、個人のスキル・能力・貢献を考慮すること。

個々人が持っている能力をフルに発揮して貢献できるようすることである。

 

               

On The Business Training 協会 栗田 猛

 

 

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