2008年5月アーカイブ

5年ほど前、震度6弱の大地震の真っ只中にいたことがある。

幸い亡くなった人はなかったが、多数の家屋、建築物が倒壊した。

翌日から、当時の県知事はヘルメットをかぶって復興の指揮をとる映像が報道されていたが、このとき思ったことがある。

実際に泥まみれ、汗まみれになって瓦礫を片付けているのは、自衛隊員や消防団員、一般のボランティアの人たちだ。

決してスポットライトが当たったり、褒められたりすることのない仕事だ。

この人たちは、人間として、やるべきことを黙々とやっているのだ。

 

ずいぶん前の話だが、当時NHKの川口幹夫氏が『主役・脇役・湧かせ役』という著書でこう書いていた。

「脇役は単に脇の役ではなく、湧かせ役でもある。主役と脇役とのカラミが功を奏するとドラマは深みを増し、思いもかけぬ成果を生む」

脇役こそ大切だという考え方は、サラリーマン社会にも通ずることだろう。

脇役的な立場にいる人たちが自分の力を信じ、生き生きと自分の力を発揮する組織と、そうでない組織との力の差は大きい。

 

人を動かすとき、褒めるということは必要だ。

しかし、褒めることばかりやっていると、褒められて当たり前、褒められなければ動かない人間をつくり出す。

そうすると日々の行動なり仕事なりに感動がなくなってくる。

向上心も失せてしまう危険な状態に陥る。

 

『やってみせ、言って聞かせてさせてみて、褒めてやらねば人は動かじ』と言ったのは山本五十六。

一方、バルセロナオリンピックの女子マラソンで銀メダルに終わった有森選手は、ゴール後のインタビューでこう語った。

「自分で自分を褒めてやりたい」

出場すれば金メダルを期待する日本国民に対して、銀メダルだったけれど自分自身のがんばりを自分で褒めてやりたいということだ。

褒めてもらいたいからするのではない、スポットの当たらない、自分で自分を褒めてやる仕事が世の中にはいっぱいあることを若い人たちに教えていくことも必要だろう。

 

On The BusinessTraining 協会 門田 元宏

「気」という字がつく単語は1,000語ほどあるという。

広辞苑の3,000ページを調べることはやっていないが、思いつくままに書き並べてみても、やる気、元気、勇気、陽気、根気、人気、強気、弱気、気合、気迫、気力、負けん気、気まま、短気、呑気、気分、天気、色気、浮気・・・まだまだいっぱいある。

「気」という語そのものの意味は『生命力の源。行動の原点』とあり、この「気」が健全かそうでないか、強いか弱いかで、明らかに行動そのものが異なる。

 

今風のことばにすれば"マインド"というのが近いであろうか。

"スキル"の軸と併せて、この"マインド"の軸の双方がアップしていかねば、『人財』としての力は出てこないだろう。

スポーツの世界でも、肉体の鍛錬を併せて、"精神力"が成績を左右する。

「気」が生命力の源であればこそ、この「気」を如何に引き出すか、発揮させるかが生命力、人間力の強さに繋がるのだ。

 

企業内教育は、経営根本精神の具現化を最終目的とするものと考えているが、「現在」と「未来」のふたつの側面を持っている。

即ち、現在の闘いを有利に導く戦術的教育と、企業の未来を確実にするための人材開発とに区分できる。

そのいずれに偏っても、企業内教育は存立の意味を失ってしまう。

また、教育には「知識・技術の付与」と「意欲の喚起」というふたつの領域があり、これもいずれかに偏った場合、企業内教育はその本質を見失う。

 

如何に理屈を並べても人は動かない。

だから、『理動』ということばはない。

如何に知識を詰め込んでも人は動かない。

だから『知動』ということばもない。

しかし、人を育てる立場の人間のメッセージが、相手の感性にまで到達したとき、人は本気で動く。

だから『感動』ということばがある。

教育の対象は人間である。

人間の人間たる所以である"マインド"に働きかける教育が、昨今少なくなっていることが"気"にかかるが・・・。

       

 

On The BusinessTraining 協会 門田 元宏      

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