2008年4月アーカイブ

ある中学校に"万歳先生"というあだ名の先生がいた。

その先生がクラス担当に決まると、生徒が「万歳」と叫ぶところからきているあだ名だったそうだ。

この万歳先生、期末試験になると生徒の家をひそかに廻って、『期末だ、ガンバレ』という手紙とキャラメル一個を小さな封筒に入れて郵便受けに入れていく。

体操の授業中、受持ちの生徒がグランドに行っている間に、教室の筆箱や教科書の間に激励の手紙を入れておく。

教室に戻った生徒がその手紙を見つけ、我も我もと探し出してみんなで読みふける。

 

毎年2月、高校入試が始まる。

万歳先生は、朝早く、駅に繰り出し、車の屋根に『○○中学生徒諸君、奮闘を祈る』と幟を立てて、受験生一人ひとりを激励する日が続く。

初めての受験で不安でいっぱいの生徒も、万歳先生の顔を見て、猛然と奮い立って出発する。

寒風吹きすさぶ早朝の駅頭で、ひとり立っている万歳先生を生徒が見つけると、「先生~」と叫びながら駆け寄っていく。

万歳先生も駆け寄って「ふだんの実力を出せば大丈夫だ」と激励する。

もちろん、日頃の授業も熱意とユーモアにあふれた教え方で、しかもプライベートな問題にも親身になって相談に乗る。

この先生は、自分の仕事に誇りを持っていて、生徒が可愛くてたまらないのだ。

生徒は、この駅頭でのシーンを生涯忘れることはないだろう。

 

部下の育成ということが、今日のように価値観が多様化している中で、企業としてはきわめて難しい問題になっているようだが、この話を聞くとき、自分も同じようにやってみようという思いが湧きあがってくるだろう。

感動のない仕事ぶり、感動のなかった過ぎし日々、感動を大切にする気持ちの薄れている様子に思いを致すとき、ある種の衝撃を受けないとしたら、自己の感性はかなり磨り減っていると思っていい。

感動の伴わない人生は人生とは言わない。

学校教育の現場に、企業内教育の現場に、燎原の火の如く"万歳先生"が生まれるとき、日本の若いひとたちの眼がどれほど輝きわたるか、万歳先生はそのことを黙々と行動で示していらっしゃったのだと思う。

 

 

On The BusinessTraining 協会 門田 元宏

「私が扉を開ける。」これは「私が」扉を意識的に開ける「動作」を意味している。
「扉が開く。」こちらは、風で扉が開いたり、自動で扉が開いたりする「現象」を表している。

先日わが社で新入社員教育の体験をした。私自身新入社員教育を受けたことがなかったこともあり、大変貴重な時間となった。

私は今回の教育を体験して、仕事に対する認識について改めて思い知らされることとなった。自分が仕事をするということは、自分にしかない「価値」を生み出すことに大きな意味がある。

その価値を生み出すために、目の前にある仕事に自分らしさを吹き込むことから始めてみようと思った。目の前の小さな仕事にも自分らしさを吹き込んでいくことで、小さいけれど自分の価値を今からでも生み出せるような気がした。そのためには、自分にしかできないものは何か?を問い続ける日々の意識が必要である。自分らしさとは何か、自分にしかできないこととはなにか、日々意識し考えることである。

私は4年ほど前椎間板ヘルニアを患い3日間眠れず、非常に痛い思いをしたことがある。原因は日常の姿勢の悪さからということだった。幸い今のところヘルニアの再発はないが、新入社員教育の中で背筋を伸ばしなさいと注意を受けたとき、あんなに痛い思いをしたのに姿勢を治していなかった自分に再び気づいた。実を言うと、これまでにも「背筋が丸まっている。」と何度か言われてきたのだ。「姿勢を治さなければならない。」ということは当然、頭では分かっている。しかし、意識をして治そうとし続けてこなかったのである。

教育の日以来、意識をして「私は、背筋を伸ばしている。」初めはなんだか辛いものだ。知らないうちに背筋が丸まっていることにも気づく。簡単には治らないらしい。

人間は変化を求めず、現状を維持していくことの方が安心でいられるという。確かに今の自分のままでいることは楽なことだ。ただ、それでいいのだろうか。

「私は、背筋を伸ばす。」背筋を伸ばすことも自動的に「伸びる」ものではない。日々意識をし、背筋を「伸ばし」て、自分の習慣を変えていかなければならないものだ。

仕事でも同じことが言えるのではないか。価値ある仕事をするためには、当然「私」が主語であり、日々意識をし、単なる「現象」ではない自分の「動作」にして自分の習慣を変えてゆく。それをし続けることが、価値を生みだしていく糧になるのではないだろうか。

OBT協会 小野尊子

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