2013月07月24日
【事例】ビジネスモデルの転換 ―中期経営計画実現プロジェクト―
今回は我々が「中期経営計画が浸透しない、或いはその実効が上がらない」という経営課題に
クライアントと一緒になって取り組んだ事例をご紹介したい。
経緯
経営からは"10年後も生き残るための付加価値のあるビジネスモデルへ転換"という
大きな方向性と、業績目標が五カ年計画として出されていた。
<五カ年計画骨子>
・価格決定権を握る
・卸からメーカーへの脱皮
・売上高1,000億、経常利益率3%
しかし、現場からは、「将来の在るべき姿がわかりにくい」、
「絵が大きすぎて何をやればいいのかわからない」、
「日々の業務に追われていて、考える時間もない」などの不満の声が上がり、
仕事のやり方も何も変わっていない状況が続いていた。
<当時の状況>
・産地と小売業や外食産業との中間に位置し、顧客が必要とする商品を
調達するというビジネスモデル
・大量仕入れ、大量販売にて収益を獲得するという強いパラダイム
・個々人の経験や勘といった感覚で仕事がやられているため、
大量在庫、大量廃棄ロスが常態化
・組織間の壁の厚さ、組織間の連携の悪さ
OBT協会の問題意識
多くの企業においてこのA社のように、中期経営計画のみならず、新しい戦略、制度等
の様々な経営施策が、大きな絵として作られてはいるものの組織内に浸透していない、
実効が上がっていないという状況が見受けられる。
そして、第一線や現場に停滞感や疲弊感があって活性化していない本質的な
要因のひとつが、「計画と実行の分離」にある。
そのため、私共がクライアント企業と一緒に取り組む際には、
次の2つの成果を目標におく。
① 企業が抱える様々な経営課題や業務課題、組織課題等を第一線にいる人達や
現場の人達にその解決策を見出させること、
② 解決策を見出すためのプロセスを通して人財の育成や
人財のレベルアップを図ること、
この2つの同時実現である。
何故ならば、一握りの経営幹部や一部のスタッフだけ、或いは外部の専門家だけが
考え出した施策は、組織全体に容易に浸透しないし、肯定的に受け止められていないので
容易に動き出さない。
重要なことは、今今の市場や変化を実際に現場で、体感でわかっている人たちに
その解決策を導き出してもらうことが時間は要するものの、中長期的に見ればより
最適な方策だということである。
A社のプロジェクト
"10年後も生き残るための付加価値のあるビジネスモデルへ転換"するために、
現場の第一線にいるリーダーを集め、具体的な解決策を見出すプロジェクトを結成した。
プロジェクトの重点は、
① 価格競争からの脱却と付加価値での戦いに転換する事
② 青果物のバリューチェーン全体の中で自社がイニシアティブをとる事
これを実現するビジネスモデルを構想し、
そして本プロジェクトのメンバーが中心になって展開していった。
勿論、経営課題の解決策を簡単に考え出すことは出来ないし、試行錯誤もする。
然しながら、人財育成という観点で考えた時、
① プロジェクトの中で、会社の方向性を考え出すために紆余曲折する時間や
プロセスが重要で、そこで人は多くのことに気づき様々な学習をする
② 自分達が作ったものであり、その趣旨や意図も十二分に理解しているので、
職場や部下達にも自分の意思や言葉で説明し納得もさせられる
③ 参加者の問題意識や当事者意識、そして主体性を醸成することにつながる
経営課題の解決策を考え出すプロセスで、参加したプロジェクトメンバーに
見られる変化(我々はこれを学習の成果としている)は5つほどある。
これを社内だけでやろうとする場合は一定の限界がある。
何故ならば、解決策を考え出すプロセスで生じる社内の人間の限界は、
客観的に物を見ることの難しさである。
そして自分達の会社の内部がわかり過ぎているため、常識的過ぎて
課題の本質に迫っていけない。
「これまでの施策と大差のない甘い解決策で妥協する」、或いは
「行き詰って頓挫する」等の状態を回避するために、何のしがらみも持たない、
客観的、大局的視点からアプローチ出来る経験豊富で、また、この種のことに
多くの知見を有する社外の専門家のコーディネートが不可欠であり絶対条件となってくる。
解決策を考え出すために必要な側面
また、解決策を考え出すことを、建物を立てる場合に例えると、
設計士は、図面を描けても、家を建てることはできない。
しかし、大工は精密ではないが図面を描き、家を建てることができる。
何故ならば、日々の経験の中で感覚的にわかっているからである。
現場を体感でわかっている人間は、設計士ほど精密でなくても図面を描くことができるのである。
しかし、より確かな、より良い家を建てようとするのであれば、
「設計士と大工」、「論理と経験」、さらに言うと「論理と志」の両方がないとだめなのである。
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