2014月01月20日
経営リーダーを育成する学習のポイント
経営リーダーに求められる能力というのは履歴書には表現出来ない能力である。
数学を学ぶようには、学べない能力であり、それは、ある公式に当てはめて答えを
導き出すといった類のものとは明らかに異なるからである。
それ故、「予め」正解という具体的な回答を得るように簡単には「学ぶ」ことができない。
個別の業界の専門的知識やスキルを超えた極めて汎用性の高い実践的な能力といえる。
これはリーダーには特に必要となる能力である。
その能力を身につけるための「学習」は、「想定の枠内」の積み上げ的な
「学び」だけではダメで、その枠を超える「学び」の能力も含まれている。
先程、OBT協会が考える"経営リーダーに必要な力"を
一言で言うと「将来に向けて自社を変革していく能力」
と申し上げた。
このような経営リーダーを育てるためには、大事なことは2つある。
1) 育つための学習方法
2) 育つための組織の要件
この2つが必要不可欠である。
まずは、1)経営リーダーを育成する学習方法についてであるが、
我々が、最も重要視しているポイントをご紹介したい。
経営リーダーに不可欠な能力として
「高い観点から自社を、自社事業を、自分たちを俯瞰する力」があげられる。
それを滋養する為には、より高い観点から自社や自社事業を俯瞰して
現状をより客観的に認識し、課題を修正していくという学習が必要となる。
より高い観点から、自社を見たら、我々の事業を見たら、
我々がやっていることを見たら、「一体何が見えるか?」、「どのように見えるか?」。
例えば、業界の大方の企業の戦い方ではなく、極めて非合理な戦略が、
変化の中ではある種の合理性を獲得していく。
・・・そのような視点で見た時に、我が社の経営、我が事業はどのように見えるか。
これは、日常、我々が仕事をする中で見ている、感じている我が社、我が事業とは
全く違った、異なったものが見える。
自社の現状、自社の事業の状況、自分達の状況等を客観的に見られるかどうか、
その見る鏡が歪んでいたら課題や問題の本質を俯瞰することは決して出来ない。
全てはまず、自分達のことを客観的に見られるかどうかに規定される。
いずれにしても「今の時代の企業力の差」とは、組織の外から自社を
客観的に見ることができるかどうかの差であり、"賢慮さ"とはその深さといえるであろう。
この種の能力は、個別性ある、具体性の高い、いわゆるハウツー本やスキル研修や
ハウツー研修或いはフレームワーク研修等では培えない。
次に2)育つための組織的な要因を見ていく。
経営人財を育成するためには、ここまでお話したような学習の場が重要となるが、
その取り組みが一過性ではなく、実効と定着を図るための、組織的要因も重要である。
従来は、人を育てることは上司である管理者・監督者の責に帰するという考えが
圧倒的に多かった。然しながら、この問題を単に「管理者だけの責任に帰すのか」
「今の時代管理者だけでは乗り越えて行けない問題とするのか」。
本来、企業の問題には、「個人の力」で乗り越えて行けるものとそうでないものがある。
今の時代、経営人財の育成という課題は、組織全体で取り組まなければならないテーマである。
①学習の場
「どのような講師が」「どのような学習を」「どのようにやるか」
ということで成果の概ねが決まる。
②制度・仕組み
机上の空論に終わらせないために、取り組むべき課題が与えられ、実践できる場が必要である。この実践の場としての経験が育つための重要な要素となる。
育つためには、難易度の高い仕事への挑戦や自分の能力を超越するような経験、
いわゆる「一皮むけた経験」「修羅場体験」である。このような実践的な育成の経験を
積ませる場を組織に制度や仕組みとして埋め込むことが必要である。
重要なことは、目的意識を共有して緊密な相互作用を生じさせる"場"の設定である。
③マネジメント
経営人財を育成する上で有効なのは、上司から本人に対するフィードバックである。
仕事での経験を積む中で良質な判断とそれに基づく最適な行動が取れているかについて、
適時適切なフィードバックと内省が循環的に実施されること。
また部下に対し、「君はどう思うか」などを頻繁に問う、考えさせるマネジメントが重要である。
自社、自組織、事業の存在意義だけでなく、業務、仕事の中での様々なものに対して問われることにより、自分の考え方や自分の判断軸等を深く考えるようになるのである。
④風土
教育や学習していくことを大事にする風土、人を育てていこうとすることに
前向きな体質や風土の企業。
⑤経営戦略との連動
単に「人を育てる」といった曖昧な形でではなく、"育成のテーマ"が例えば、
「競争力の向上」 「知的生産性の向上」 「組織パフォーマンスの向上」等
といったいわゆる経営戦略からの要請による明確な目標を与えられるものでなければならない。
大事なことは、経営戦略と連動した人事諸施策、育成施策であり、
育成施策は企業戦略を実現するためのもの、経営戦略の一環として取り組むべきものである。
⑥経営層の強力なコミットメント
経営人財の育成は企業にとって極めて重要な戦略的課題であり、
その実効を上げるためには経営トップの積極的関与が非常に重要となってくる。
育成の場を経営者自身が理念や戦略を語る場、社内の風土を変革する場、
社員との一体感を作る場として捉えると、極めて有効な場と言える。
経営人財の育成は、設備や機械とは違い、生産性の向上が数値ですぐに確認できる代物ではない。
そこを理解せず、1~2回実施しただけで「成果がでない」「うちには合わない」
という一言でまた新たな施策(いわゆる青い鳥)を探し続ける企業がことのほか多い。
そして何も変わらず、人も育たずという事例は非常に多い。
⑦企画側の主体的な意思
企画する事務局側の「我が社の在るべき人財像」や、また「これを通じて組織内に
何を起こしたいのか」等といった主体的な意思が非常に重要となるが、
上から言われたから、経営から指示されたからとか、他社でもやっているから、
これまでもやってきたから等というレベルで企画しているようでは駄目なのである。
また、「セレモニー的に行う階層別的教育から脱皮すること」。
更に、我が社の特定テーマへ対応するトレーニングを求めること。
「研修団体が提供する研修にとって最適なやり方化」をそのまま導入せず、
また、成果を単なる受講者のアンケートで評価するという極めて
短絡的なやり方から脱皮すること。
人財教育やビジネス教育というものを単なる「人事制度の採用・配置、評価、
能力開発等といった領域」で満足している限りは、
何時まで経っても「非日常の儀式」といった認知から脱することが出来ない。
「非日常」と「セレモニー」というパラダイムが研修会社にとって
最適なやり方を常態化させてしまっているのである。
また、人財を所管する部門は、我が社の人財に対する一貫した考えや姿勢を持つこと。
更には人の成長や組織の変革等に対してもっともっと勉強することが必要である。
多くの人事がすべからく戦略的人事というよりも、これまでのやり方を踏襲しているだけの
単なる維持的人事というところにとどまっている。
<前の記事 | 次の記事> |