OBT 「経営課題」と「人財に関わる課題」の同時解決

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2016.02.05 : UPDATED

企業の本質は「組織の実態」にある


前回のブログでは、「風土の脆弱化を表す象徴的な現象」は、大きく分けて三つあり、
その内の二点をご紹介した。
1.危機感の欠如2.天動説、最後の1つは、「無責任構造」である。


    3.無責任構造

組織が一定の規模に達して安定期に入ってくると大方の場合、組織内部のルールや
制度等の運用といったものが次第に甘くなってくる。
例えば、会議体ひとつとっても他部門のことや担当外のことには遠慮が働き、立ち入らない。


組織の連帯責任というのは、往々にして無責任構造につながりがちである。
無責任構造の具体例としては、「自分一人が言っても何も変わらない。
いずれ誰かがやってくれるだろう」、或いは「多分、何とかなるだろう」という過度な楽観論である。
このような現象を組織心理学では、集団愚考並びに社会的手抜きといっている。
このような傾向は、歴史の長い企業程強い。


そして何か具合の悪いことが起きると
「私は悪くない、悪いのは置かれている状況や周囲にある」と主張したりする社員が増加する。
企業や組織の無責任構造というのは、ガンと同様で時間と共に病状が進行してくる。
皆、潜在的に悪いのは自分ではないと上から下まで思っている。
上は下を、下は上を、或いは部門同士も、要は皆、「自分以外が悪い」と思っているのである。
この無責任構造の症状というのは、「組織としての思考停止」の事例と言え、
成熟期から衰退期に向かっている企業に非常に多く見受けられる現象である。


このような点にその企業の体質と抱えている問題点が現れているのであるが、
多くの組織では、「風土の劣化という潜在的な問題を危機」として認識する事が出来ていない。
組織とか人財というのは、手をつけず放置したままにしていると次第に劣化していく。


そして「昔は社員も元気があったのに最近は」とか、「以前はいろいろ新商品に関する
提案等もあったが最近は」とか、以前とは「何かが違ってきた」というようなことは感じつつも、
一応業績は上がっているため、これらの解決への取り組みはどんどん先送りされてしまうのである。


これは、「これまでもうまくやってこられたから、これからもやっていける」という思い込み。
「この慣れ親しんだ快適な環境を失いたくない」という思い入れ。
「我々より状況をわかっている人間がいるわけはない。外の人間に何がわかるか」という思い上がりである。
そして、次第にゆるやかに衰退していくというのが一般的である。


"物理に臨界量の概念"という法則があるが、
これは、企業経営にもまさに当てはまる概念である。
業績低迷や衰退或いは不祥事というのは、ある日突然起こったように見えるが、それは違う。
「大したことはない」と放置し続けてきたいくつかの些細な問題が、
ある時期に相互作用を引き起こし、事態が加速度的に高まった時、
大きな問題として露呈してくるのである。


業績低迷や経営危機というのがある日突然起こったように見えるため、当事者は
『予測を超えた円高が・・・』等と釈明するが、間違いなくずっと以前からその兆候があって、
それを放置し続けてきた結果、生じた問題なのであり、
要は、起こるべくして起こったものなのである。

このような前提で考えた時、「一体、企業をどのような側面で見るべきなのか?」という疑問が生じる。


企業の中には一見、経営がうまくいっているようでも組織の内情はひどい病に冒されている企業が非常に多い。
業績は上がっている、株価が高い等といっても業績や株価というのはあくまでも結果指標であり、
重要なことは、その結果指標がどのような組織の実態から生み出されているかということである。


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そこに間違いなくその企業の「経営の実態」が象徴されているのである。
結果指標だけを見てその企業の優劣を評価してもあまり意味のあることではない。
改革が進まない多くの企業に見受けられるのは、この結果指標には
多大の関心とパワーを注いでいるものの、結果指標を生み出す、
人財や組織の実態に関心が払われていないために本質的な面に手が打たれずに、
次第に病理的な状況に陥っていくというパターンがあまりにも多い。


そしてこれが企業風土化し、業績等の結果指標にも次第に停滞傾向が現れるような
症状を呈してくるというのが一般的である。
「内部統制」や「個人情報」「JSOX」等といったコンプライアンスに対応する仕組みは
簡単に作れるであろうが、それらが本来の目的どおり運営しうるかどうかは
まさにその企業の風土や組織の実態に規定される。


このように企業の本質とは、まさにその企業組織の実態そのものである。
自社の組織の実態そのもののレベルを高めることに注力することが、
経営のリスクを軽減し、持続的な競争力につながるという視点が
これからの経営、マネジメントには重要といえるのではないだろうか。



今回の「opinion」に関連する事例・知見


現場の主体性無くして、企業風土改革は実現しない


企業の競争優位性は結果指標では
なく、それを生み出す組織の強さ、
社員のモチベーションに規定される


組織の活力や勢いを規定する
企業風土を検証すべし!


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